信越本線
最終更新日2012.02.04.
● 基本データ
日本に鉄道が導入されて間もない明治初期、東京と大阪とを結ぶ中山道幹線として建設が始まったのが信越本線である。私鉄の日本鉄道が明治17(1884)年5月1日が上野-高崎間を開業させたのを機に、高崎から西にむかって路線の建設が着工され、明治18(1885)年10月15日高崎-横川間が開業した。一方、中山道幹線の建設資材運搬の為、直江津から路線が建設されることになり、直江津-関山間が直江津線として、明治19(1886)年8月15日開業した。同様の資材運搬路線として武豊線がある。
そもそも、東海道沿いではなく中山道に沿って路線が建設されることになったのかは、東海道には水運があった、中山道の方が距離が短いなどの理由があったが、大きくいって国防上の見地(路線が攻撃されにくい)からであった。しかし、山岳路線であるが故に巨額の工事費がかかり、列車のスピードアップも望めないことから、明治19(1886)年、東西幹線は東海道沿いにすると改められた。だが、直江津線の建設は継続され、明治21(1888)年5月1日には長野、同年8月15日には上田、同年12月1日には軽井沢まで延伸開業された。
ところが、横川-軽井沢間には、急峻な碓氷峠が横たわり、ルート選考に難航した。鉄道(特に蒸気機関車)は勾配に弱いからである。その頃、アプト式と言われる歯形のラックレールに歯車をかみ合わせる方式を導入している鉄道(ドイツのハルツ山にある)の報告が、当時の鉄道技師仙石貢からなされ、この方式を碓氷峠で採用することになった。5年の難工事の末、明治26(1893)年4月1日横川-軽井沢間が開業。66.7‰という急勾配を克服することに成功した。1‰(パーミル)=1kmで1mの勾配。24〜25‰程度で相当な傾斜で、場合によっては登れないこともあり。信越線の開業する前の5年間は、先行して開業していた碓氷馬車鉄道という馬車鉄道で同区間を連絡していたこともあった。
アプト式で越えることができた碓氷峠だが、蒸気機関車ではスピードも出せず、トンネル通過時の煤煙もひどい為、明治45(1912)年5月11日に電化された。当時電化されていたのが東京の電車区間だけだったので、いかに碓氷峠越えが大変だったかがうかがえる。電化によって、1時間15分の横川-軽井沢間が49分に短縮されたが、モーターが火を噴くなどの故障も度々起こり問題となっていた。昭和38(1963)年、電磁波吸着式ブレーキを装備した峠越え専用の電気機関車(EF62やEF63)の誕生や新線(勾配は66.7‰で変わらず)の建設によって、碓氷峠越えのスピードアップと効率化がはかられ、廃止直前には18分で結んでいた。ちなみに旧線のレンガ式の碓氷橋(碓氷第三アーチ橋)は、鉄道遺産として登録されている。
しかし、急峻な山岳路線であるが為、事故が多かった。大正7(1918)年3月7日には、貨物列車が逆走、脱線大破し、機関士数名が死亡する事故が発生。昭和25(1950)年6月8日には、碓氷峠の中間点付近の旧熊ノ平駅構内で土砂崩れが発生、復旧作業中の作業員74名に2度目の土砂崩れが襲い、関係者50名が死亡する惨事が発生した。
鉄路維持にこれだけの苦労があった碓氷峠だが、平成9(1997)年の長野新幹線の開業によって、その役割を終えた。なお、横川駅-軽井沢駅間(11.2km)については廃止後列車は当然走っていないが線路は残っており、廃線の復活を望む声は多い。
横川-軽井沢間の開業より、高崎を起点に直江津へと至る本州横断線が誕生したことになるが、直江津から東へ、柏崎、長岡を経て、新潟へむかう路線は私鉄の北越鉄道によって建設が進められた。明治30(1897)年5月13日、春日新田(直江津の東)-鉢崎(現米山)が最初に開業した路線ある。同年8月1日柏崎、同年11月20日北条まで延伸。同日、東の路線、沼垂(新潟より東)-一ノ木戸(現東三条)間が開業した。明治31(1898)年6月16日、一ノ木戸-長岡間。さらに同年12月27日、北条-長岡が開業、北越鉄道の東西の路線がつながった。明治32(1899)年9月5日直江津、明治37(1904)年5月3日(旧)新潟まで開業して、直江津-新潟間が全通した。
全通の3年3ヵ月後の明治40(1907)年8月1日、北越鉄道が国有化され、明治42(1909)年10月12日の国有鉄道線路名称設定によって、高崎-新潟間が信越線となった。上野-新潟間は国有化直前の明治40(1907)年5月18日に1日2往復運転されていたが、かなりな迂回ルートである為、所要時間は15時間40分もかかり、三国峠を越える上越線建設の必要性が言われるようになった。
平成9(1997)年10月1日の長野新幹線の開業により、横川-軽井沢間は廃止(バス輸送に変換)、軽井沢-篠ノ井間は第三セクターしなの鉄道に移管された。これは、日本の鉄道史上初の本線分断となった。
現在の信越本線は、高崎-横川間は高崎の、篠ノ井-直江津は長野のローカル輸送を受け持ち、直江津-新津(新潟)は日本海縦貫線の一翼を担うという、3つの顔を持っている。
高崎-横川間 29.7km 篠ノ井-新潟間 220.6km 計250.3km
※ 横川からバス、しなの鉄道を経て、直江津、新潟と攻略することも可能(9時間くらい)だが、高崎-横川間、
篠ノ井-直江津間、直江津-新潟間に分け、他路線と組み合わせて乗りつくしをはかる方がよい。
[車窓の楽しみ方]
高崎から市街地を抜けると、水田地帯を走るようになる。安中駅近くには東洋亜鉛の精錬所があり、エントツ群が異彩を放つ。夜間には等間隔にならんだ照明が工場を照らし、何やら近未来的な建物のようだ。また、安中は明治初期の教育家新島襄の出身地でもある。やがて、列車はどんどん高度を上げ、進行(横川)方向右手に榛名山、そして後方には赤城山が見えてくる。こうして磯部になる。駅北には温泉があるが、ここで初めて温泉マークが使われたのだそうで、駅前にはそれを記念する碑がある。また、恐妻碑もあるが、「かかぁ殿下とからっ風」の土地柄にふさわしい。ただ、これには"愛妻"の逆説が意味も込められているらしい。松井田を出ると碓氷川を渡り、いよいよ山の中に入ってく。やがて、進行(横川)方向左手にゴツゴツした奇岩を擁する山容が迫ってくる。妙義山である。そして、国道18号線と並走しだすと横川駅である。
碓氷峠が廃止されるまで、連結風景が見られ、その間乗客はおぎのやの峠の釜めしを買いに行くなど、賑やかな駅だったが、今では、(盲腸線の)終着駅の雰囲気。しかし、横川駅の峠の釜めし屋は健在である(冬季は早くなくなるなど注意が必要だが)。また、駅内ではかつてのアプト式のレールを見ることができる。ここから西へは、JRバスが、碓氷バイパスを走り、軽井沢まで34分で結ぶ。碓氷峠を力走する姿を懐かしんでの旅になる。軽井沢からはしなの鉄道で篠ノ井まで、路線も車輌もJR(国鉄)のものを使用しているので、あまり第三セクターに乗っているって感覚がない。
篠ノ井駅は、しなの鉄道との境なので、切符売り場では両社のものが購入できるようになっている。また、駅入口には立派な扁額がある。これはこの地に疎開し、その後永住した書家によるものだそうだ。また、駅すぐ横を長野新幹線が走っているので、駅出口脇には見学台が設けられている。また、各列車の通過時間も掲示されているのも嬉しい。
篠ノ井から善光寺平を走り、長野市内を流れる犀川を渡ると急速に住宅が増え、長野駅に到着する。長野電鉄は駅前地下乗り場から出発し、湯田中などにむかう。長野を出発して、しばらく住宅街の中を走るが、豊野からは山登りとなり、線路が左右にカーブするようになる。登りきったところに黒姫駅がある。黒姫駅から徒歩15分くらいの所には小林一茶の生家がある。また、ナウマン象が発見された野尻湖の最寄駅でもある。野尻湖近くには博物館がある。黒姫駅と隣の妙高高原駅と、この区間は雄大な妙高山を望むことができる。また、スキー場が多く、冬季には多くのスキーヤーが訪れる。妙高高原駅の二つ先の二本木駅は、スイッチバックをするので有名な駅である。スイッチバックを列車が通過する際、運転士が前後に移動して列車を運転させるのが面白いのに、ここ二本木では、(運転士の移動もなく)あまりにもスムーズにスイッチバックを通過していく。にスイッチバックを下ると新井駅。ここから平地を走るようになり、市街地が見えてくると、直江津駅に着く。長野駅-直江津駅間には長野新幹線開業に伴い廃止された特急あさまの車輌(189系)を使った普通列車の妙高号が運行されている。
直江津駅から関川を渡り、進行(新潟)方向左手の工場群から貨物線が合流してくると列車は加速し東へむかう。そして、直江津の2駅目の犀潟を出発すると、北越急行の路線が離れていく。柿崎駅付近から日本海に近いところを走るようになる。日本海からの強風に耐えているようにみえる町は米山集落で、米山講が盛んな信仰の山米山の玄関駅である。列車は青海川駅付近で、もっとも海に近づく。荒波で線路が流されるのではないかと錯覚を覚えるほど。この青海川駅は、平成19(2007)年に発生した新潟県中越沖地震による崖崩れで駅の半分が土砂に覆われたが、復旧工事による法面は、その被害の大きさがうかがい知ることができる。そして、青海川を出るとすぐ山側に国道の巨大な橋梁があらわれ驚かされる。この先も海とトンネルが交互に続き、こうして柏崎駅に着く。
柏崎からは内陸を走り、頚城丘陵の山間に進むようになる。越後岩塚駅から進行(新潟)方向右手に、宝徳稲荷大社があり、朱塗りの社殿が目をひく。信濃川を渡り、上越線の線路と合流すると宮内。上越新幹線の高架が近づくと長岡駅に到着する。長岡は長岡城に建てられた。駅前にその記念碑がある。また、長岡と言えば花火が有名で、駅前には打上げ花火の筒や、新幹線コンコースには花火の模型、ホームには花火がある。
長岡市外を抜けると、とても広い越後平野をただひたすらまっすぐ進む。五十嵐川を渡ると弥彦線の線路と合流、東三条駅。さらに、越後平野を車窓に見ながら列車は進んでいく。このあたりでは、進行(新潟)方向左手に弥彦山系を遠望することができる。進行(新潟)方向左から磐越西線の線路が見え合流すると新津駅に着く。新津駅では信越線と磐越西線、羽越本線がクロスしているので駅標が面白い。だんだん住宅が増え、白新線と合流し、新幹線の車庫群があらわると、いよいよ信越線の終点、新潟駅に到着である。
● 乗りつぶし記録
・1988.08. 高校の合宿研修(於;米沢)の帰り、友人の田舎に立寄る為、新潟→見附間に乗車。
・1988.08. 翌日、見附→長岡間に乗車。
・1997.07.22. 碓氷峠撮影旅行で横川←→軽井沢間(廃止区間)に乗車。
・2004.04.09. 富山・金沢旅行で宮内→長岡→直江津間に乗車。
・2004.04.11. その帰り直江津→犀潟間に乗車。
・2004.05.02. 長野旅行で長野→(姨捨)→長野→篠ノ井間に乗車。
・2005.06.19. 北関東攻略作戦で高崎→横川間に乗車。
・2005.06.19. その帰り横川→高崎間に乗車。
・2005.08.28. 身延・小海線攻略作戦で横川→高崎間に乗車。
・2005.12.17. 長野・飯山線攻略作戦で犀潟→直江津→豊野→篠ノ井間に乗車。完乗達成。
・2006.01.08. 伊豆・新潟・福島攻略作戦で新津→米山間に乗車。
・2006.01.08. 同、米山→柏崎間に乗車。
・2006.01.09. 同、東三条→新津間に乗車。
・2006.11.11. 福島・山形・宮城旅行で、新潟→新津間に乗車。
・2007.04.14. DD53 急行出羽・鳥海 追撃作戦で、新津→新潟間に乗車。
・2007.04.15. 同、長岡←→宮内間に乗車。
・2007.12.22. 長野作戦で長野→豊野→長野→篠ノ井→長野間に乗車。
・2008.09.07. 新潟・長野旅行で、宮内→新潟/柏崎→直江津間に乗車。
・2008.11.08. JR全線完乗作戦で、宮内→長岡→直江津間に乗車。
・2008.11.09. 同、直江津→犀潟間に乗車。
・2009.01.17. 北関東撮影旅行で、高崎→安中→横川→磯部→高崎間に乗車。往復完乗達成。
・2009.01.18. 同、高崎→安中/群馬八幡→高崎間に乗車。
・2009.03.13. 秋田乗りつくし旅で、宮内→新津間に乗車。
・2009.03.16. 同、新津→宮内間に乗車。
・2009.09.20. 北陸乗りつくしで、犀潟→直江津間に乗車。
・2009.09.23. その帰り、直江津→犀潟間に乗車。
・2010.04.25. 群馬撮影で、高崎→安中→高崎間に乗車。
・2011.04.29. G.W.前半作戦で、高崎→安中→高崎/高崎→安中→高崎間に乗車。
・2011.05.07. G.W.後半作戦で、新潟→新津/新津→新潟間に乗車。
・2011.05.08. 同、新潟→保内→新潟間に乗車。
・2011.07.18. 三連休作戦で、長野→篠ノ井間に乗車。
・2011.10.01. 新潟遠征で、長岡→帯織→柏崎間に乗車。
・2011.10.02. 同、鯨波→脇野田→前川/長鳥→新潟間に乗車。
● 駅舎写真
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高崎駅(2005.12.)
| 群馬八幡駅(2009.01.)
| 安中駅(2009.01.) |
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磯部駅(2009.01.)
| 横川駅(1997.07.)
| 篠ノ井駅(2007.12.) |
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今井駅(2007.12.)
| 川中島駅(2007.12.)
| 安茂里駅(2007.12.) |
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長野駅(2005.12.)
| 豊野駅(2007.12.)
| 古間駅(2010.05.)車 |
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黒姫駅(2010.05.)車
| 妙高高原駅(2010.05.)車
| 関山駅(2010.05.)車 |
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新井駅(2005.12.)
| 脇野田駅(2011.10.)
| 直江津駅(2005.12.) |
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柿崎駅(2011.10.)
| 米山駅(2006.01.)
| 鯨波駅(2011.10.) |
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柏崎駅(2008.09.)
| 長鳥駅(2011.10.)
| 前川駅(2011.10.) |
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宮内駅(2007.04.)
| 長岡駅(2007.04.)
| 見附駅(1988.08.) |
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帯織駅(2011.10.)
| 東三条駅(2006.01.)
| 保内駅(2011.05.) |
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古津駅(2006.01.)
| 新津駅(2006.01.)
| 荻川駅(2011.05.) |
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亀田駅(2011.05.)
| 新潟駅(1988.08.) |
● おすすめ撮影ポイント
撮影ポイントは、JR線路線別撮影地信越本線にて紹介している。(このページに戻る際は、ツールバーの"戻る"を使って下さい))。
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