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エイザの奇妙な冒険


2006-04-10 「♪今日はすっこしぃ〜、シリアス」

_ 「♪今日はすっこしぃ〜、シリアス」

朝、Excelと格闘中、電話が鳴る。いつものように「音速の左手」で受話器をつかみ上げ、声を「よそ行きモードに切り換える。

「はい。A社W工場、総務部エイザでございます。」

先方は中年男性の声。

「そちらのテナントで、○○社っているでしょ」

挨拶なし、名乗りもなし。こういう電話は要注意である。売り込みならまだしも悪質な「クレーマー」の可能性もある。警戒モードを一段階引き上げることにする。

「はい、○○社ですね。確かに当社のテナントにおりますが・・・」

「さっきから何度もかけてるんだけど、通じないんだ。」

そんなこと、こちらに言われても困る。それは○○社の問題。ウチには関係ない。しかしそう口に出すわけにも行かない。

しかたがないので、「はい」とか「はぁ」とか適当にあいづちを打っていると、先方が突然、ブチ切れモードでとんでもないことを言い出す。

「電話に出ないんなら、電話なんて置くな!って言ってやれ!」

しかも命令形である。非常にやりにくい、ヘンな人なのは間違いない。やれやれ。

「はぁ、少々お待ちいただけますか」

面倒くさくなってきたので、電話を転送モードに切り換え、内線電話で○○社を呼び出してみる。コール1回、2回、3回・・・。確かにコール10回でも出ない。留守なのか?それとも夜逃げ済み?

そんなこんなでイヤになってはいたが、再度電話機を操作し、モードを切り替える。「よそ行きモード」の声のまま、先方に説明する。

「申し訳ございません。内線での転送を試みましたが、どうも不在のようでして・・・。よろしければ折り返し電話するように申し伝えますが・・・」

「じゃあ、お前事務所見て来いよ!ひとっ走り見て来いよ!」

一瞬、思考停止。そこまで言うか、このオヤジは・・・。だが、電話はまだつながっている。対応を考えねばならない。おそらく相手はカタギじゃない。一般的な社会教育を受けていないか、無視しているかどちらかだ。丁寧に対応しなければならないが、「マトモ」に相手する必要はない。

「それでしたらお電話一度置かせていただいてもよろしいでしょうか?」

「はぁ?なんでだよ!」

間髪いれずに切り返す。丁寧に、ゆっくりと。避けよう逃げようとするな。しかし額面道理に受け取る必要はない。落ち着いて、落ち着いて。

「はい。○○社の事務所は、別の建物にありまして、現地まで時間がかかります。よろしければお名前と御連絡先をいただけますか。当方より御連絡いたしますが・・・」

「・・・わかった。名前は『×田』。後で電話する。」

そしてガチャ切り。まぁいいさ。想定の範囲内ですから。残念!

こっちも電話をおいて、考える。まず○○社へ連絡。対応方法の相談。上司への連絡。チーム内情報共有。売り込みならもうかかってこないだろうが、クレームならまた来る可能性が高い。5分で対応準備をしなければ・・・。

しばらくして電話が鳴る。受話器をとったO女史が私を呼ぶ。×田氏の電話を取ってしまったらしい。すぐ、電話を転送してもらう。

「はい、エイザと申します。○○社の者と連絡取りましたところ外出中とのことです。10時半には戻るそうですので、御手数ですがそれ以降にお電話いただきたいとのことです。」

可能な限り丁寧に説明すると、×田氏が答える。口調がすっかりヤクザ調。妙に偉そうな調子だ。

「おい、じゃハリガミしとけや」

思いっきり命令口調。オレに命令するな!オレに命令できるのはオレだけだ!上司のムジナ部長やタヌキ課長の命令だって聞かないのに何故、見も知らぬ貴様如きに命令されねばならんのだ!なんて言葉は飲み込んでおく。

「ハリガミ・・・ですか?」

口にだしてみると頭の中でイメージが浮かぶ。ボロアパートのドアに「金返せ!」とかいっぱいに貼ってあるイメージ。やっぱり、アレかな?

「『△△△(名前)、金返せ』って書いて貼っとけや!」

やっぱりそうだったーッ!これはかなり性質が悪そうだ。

「いいか、すぐハリガミしとけ!」

すっかりもうヤクザ語ネイティブ口調で偉そうに命令してくる×田氏。いったい何様のつもりなのだろうか。

「えー、申し訳ございません。ハリガミについてはお受けできません。御伝言ということで○○社にお伝えいたしますので・・・」

丁寧にお断りする。心の中では「だが、断る!」とかタンカきってやりたいのではあるが、ここはガマンである。

しかし×田氏はガマンなどしなかった。

「なに言ってヤガル!こっちはハリガミしろって言ってんだよ!金借りて返さないわ、連絡はつかないわで困ってんだよ!もし、いいかげんなことするようなら、お前の会社の別のところに電話するぞ。それでもいいのか、わかってんのか!」

この後もなにか一方的にに怒鳴っていたが、もうなにを言っているのか、わからない。というより理解する気もない。ほとんどグロンギ語を聞いているような気分である。

数分、ハイハイ言って聞いていたが、×田氏の言葉が尽きてきたようなので、なるべく丁寧にいう。

「はい、それでは伝言は○○社にお伝えいたします。よろしいですか」

次の瞬間、電話はガチャ切りされた。フン、想定の範囲内さ。

しかし、意外に心理的ダメージは大きかったようだ。私は大きくため息をついて、床にしゃがみこむことしかできなかった。いや、ホント。マジで。

数時間後。○○社の総務のおばさんが菓子折りもってお詫びにやってきた。つき返しつつ、話を聞いてみる。

おばさん曰く、△△さんは昔サラ金から借金したことがあったが、きちんと完済したそうだ。しかし、そのデータが流れてしまったのか、こういう電話が連日続いているらしい。いつ、どこから、いくら借りた金なのかも言わずただ金返せ、と繰り返す。要するに「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」の凶悪バージョン。警察に相談もしたが、まだ事件性が低いのでどうにもならない、とのこと。たいへん困っているそうだ。

「こういうことがあるのは知っていましたが、いざ自分達に降りかかってくると・・・。別の世界の話だと思っていました・・・。本当に申し訳ありません」

「いえいえ、お互い、落ち度があるわけじゃないですし。本当に気にしないで下さい」

「本当に申し訳ありません。これ(菓子折り)受け取っていただけませんか?」

「いや、受け取れません。そちらの皆さんで「厄落とし」代わりで召し上がってください」

心惹かれるものがあったが、がんばってつき返す。おばさんは菓子折り片手に、頭を下げ下げ帰っていったのであった。

というわけで、今日の教訓。お金に困ったときでもサラ金に手を出すのはやめましょう。後が怖いよ。総務部門も迷惑するし(ここが本音)。

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]

_ ともりん [うわわわっ、怖いですねぇ。いやはやお疲れ様でした。]

_ クマ三郎 [この程度で済むなら楽なもんだ。]

_ エイザ [コメント、タック(デンマーク語)←ネタ仕入れてきました。 ともりん様>ちなみに本日(14日)現在も電話継続中です。ヤ..]


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