「トリアワセ」という遊びを御存知だろうか?
昨年末まで、私は知らなかった。
だが私は知ってしまった。もう、幸福なあのころには帰れない・・・。
そして今年もその遊びをやりたい、と大騒ぎしている人がいるのである。
そう、O女史である・・・。
業務時間中、総務の「係長クラス」4人が集まって、なにか話している。
「微笑みの腹黒男」マグロさん。
「し○かちゃんの顔を持つドラ○もん」ロックさん。
「○産スタジアムの魔女」チョー女史。
そして「舌に毒有り、言葉に牙有り」のO女史である。
・・・なんか、悪の秘密結社の幹部みたいである。
よく見るとマグロさんをO女史とチョー女史が説得しようとしていて、ロックさんはそれを呆れてみている、といった様子。
時々O女史の「面白いんですから」とか「総務の伝統行事ですから」とか聞こえてくる。
チョーさんは時々笑いながらあいづちをうっている。
マグロさんはニコニコ笑いながら、目でロックさんに助けを求めるが、無視されている。
・・・妙に連携が取れていないのも悪の秘密結社の幹部みたいである。
と、ここで急にマグロさんが振り向いた。
「エイザちゃーん、ちょっといい?」
振りかかる火の粉は避けられない。仕方なく仕事を中座して席を立ち、マグロさんの席へ向かう。
「なんでしょう?」
マグロさんより早くO女史が私に言う。
「ね、エイザ」
「なにがですか?」
「なんでもいいから、『ハイ』って言って」
ここでいつものO女史スマイル。微笑みながらメチャクチャなことを言う。
しかし、こういうときに内容を聞かずに同意したり、サインをしたりしてはいけない。仕事を押し付けられたり、借金の保証人にされたり、外人部隊に売り飛ばされたりするからだ。
「なんの話か知りませんが、否定します。ネガティブ。ノー、ナイン、ノン、ニェット。そんな事実はありません。」
「エイザのイケズ〜」
O女史がなにか言っているが、無視することにする。
「で、マグロさん。何の話ですか?」
マグロさんはニコニコ笑いながら、訊いてくる。
「あのね、『トリアワセ』って、総務の伝統行事なの?ってゆーか、なんなの、ソレ」
・・・あんたらは業務時間中になにを話しているんですか。つーか、仕事してください。
そもそも、ロックさんが止めてくれればいいじゃないですか。
「いや、O女史が総務の伝統行事でクリスマスにみんなでお昼休みにやって懇親を深める、ってゆーから」
私もロックさんにテレパシーで助けを求めてみたりする。無視されたみたいだが。
仕方ないので、正直に答える。
「そんな伝統行事はありません。O女史の捏造です。」
「えー、去年もやったじゃん」
「去年、O女史が1人でやってました。1回やっただけでは恒例行事にはならないと考えますが。」
なるべくクールに聞こえるよう、淡々と答える。
マグロさんが苦笑しながら尋ねてくる。
「・・・わかった。で、参考までに訊くけど「トリアワセ」ってなに?」
「要するにケン○ッキーフライドチキンを鶏の形にする遊び、らしいです」
「・・・なに、ソレ」
「要するに、ケ○タのチキンは1羽を6ピースに分けているんだそうです。で、確率論で行くとバーレルを買うと1羽分のパーツがそろっている訳で・・・」
「・・・で、ソレを組み立てる、と。」
そう、漢字で書くと「鶏合わせ」。フライドチキンを使った立体ジグソー。
マグロさんの目にも理解の色が浮かぶ。そして申し合わせたように2人同時にため息をつく。
そんなマグロさんの様子に形勢不利を悟ったのか、O女史が割り込んでくる。
「えー、でもエイザもたのしんでたじゃん」
「そんな事実はありません。」
事実、バーレルを抱え込んでいたのはO女史、あなたです。あなただけです。
「ほらほら、去年のバーレルは右半身ばっかりでうまくいかなくて、悔しかったじゃん」
そんなこと、よく覚えてますね。私は完成しない〜そろわない〜とかのO女史の悲鳴しか覚えていないのだが。
「・・・食べようとしたチキンを掻っ攫われて悔しかったのは覚えてます。」
この遊びの恐ろしいところはチキンが完成するか、O女史が飽きるまで「誰もチキンを食べられない」ところにあるのだ。
「いや、でも完成すると感激するよ!やってみたいでしょ、ね?ね?」
O女史、あなたの人生において他に感動とか感激とかないですか?
とにかく、反撃する。あまり通用しないかもしれないが、手数を増やさないと圧倒される。
「食べ物で遊んじゃいけない、って幼稚園で習わなかったんですか?」
「あとで食べるからいーじゃん」
それは小学生の理屈である。
「人の食べるものをベタベタ触らないでいただきたい」
「じゃ、手袋すればOK?やったぁー」
いきなりガッツポーズ。勝手に勝利宣言モードである。ここで反撃しないと負ける。押し切られてしまう。
「駄目です。去年はO女史がトリアワセに熱中していたせいで、ケーキを先に食べる羽目になったじゃないですか。」
「おなかに入れば一緒じゃん」
それも小学生の理屈である。
「なら、お昼のワンタンメンにデザートのプリンを混ぜて食べられますか?」
ここではじめてO女史の動きが止まった。いいぞ、効いている。ちょっとクリティカルか?
「カレーに杏仁豆腐とみそ汁を混ぜて食べますか?なんなら缶コーヒーくらいおごりますが」
「イヤ・・・缶コーヒーはイヤ〜」
杏仁豆腐はいいのか、というツッコミを飲み込み、追い討ちをかける。
「じゃ、うどんにプリン。フルーツゼリー、バナナ、マッシュポテト、マカロニサラダ、いかマリネ」
ほとんど混ぜもの闇鍋メニューである。数え上げつつもこっちが胸焼けをおこしそうだ。
「エイザ、もうやめ。」
ここまで、ニコニコ笑いながら静観していたマグロさんが口を挟む。
「・・・今年は『鶏合わせ』は中止。ハイ、決定。」
かくして、O女史の野望は阻止されたのである。
だが、クリスマスまで安心はできない。
いつ、O女史がムジナ部長やタヌキ課長を丸め込みに行かないとも限らないからである。
蛇足
あとで、チョー女史に訊いてみた。
「なんで、O女史を止めなかったんですか?」
チョー女史はにっこり笑って答える。
「いや、面白そうだったし」
・・・鶏合わせがやりたいなら自宅でやってください。
「ううん、そうじゃなくてO女史の反応がね」
・・・O女史をけしかけて遊ばないでください。もしも止められなかったらどうするんですか。
「私は大丈夫。だって鶏肉キライだし。」
こう言ってにっこり微笑むチョー女史。所詮O女史と仲良しさんである・・・。
シラガさんが晩御飯をおごってくれるというのでひと思案。
検討の結果、今まで食べたことのないものを、ということで ブラジル料理に挑戦 することに。
向かったのは鶴見にあるセグレード。
ネットでも評判の良いお店なので期待していく。
一緒に来たにんにくとトウガラシのペーストが美味。
「明日、臭くなるかも〜」 とか言いながら、ペーストを食べ続けるシラガさんと私。
衣を付けずにマッシュポテトを素揚げしたようなコロッケ。ひき肉入り。
素朴な食感だが、 オリーブオイルで揚げているため油のベタ感なし 。
コショウ味。おそらく骨とか腱とかを煮込んでいるため、 とろとろしていて温まる 。
サラダはドレッシングが美味。
焼肉は肉っぽい味。ちょっと固めかもしれない。
本日のメイン。 豆のつぶ感ととろとろの豚肉が美味 。
ご飯にかけていただきます。
人生で一番 「重い」プリン だった。
・・・おいしいんだけどちょっとキツイ。
概して 素朴でおなかいっぱいになる料理 。
別に上品でも宮廷じゃなくても、 うまいものはうまいのだ 。
店にはウェイトレスさんが二人。
一人はブラジルの方でおそらくお店の奥さん。
もう一人は黒髪のアジア系っぽい若い娘さん。
黄色いチビT、タイトなブルージーンズがどことなく違和感を醸し出しているのか?
外見は日本人ぽいのだが、 どことなくエキゾチック 。
ひょっとしたら日系かもしれないので、発注もゆっくりとした口調でおねがいする。
スマイルやお酒の種類の説明が出来なくても、気にしないことにする。
しばらくして、隣の席のブラジルの方がウェイトレスさんに早口のポルトガル語で話しかけた。
ウェイトレスさんはこう言い返した。
「すいません。私日本人なんでポルトガル語、わかりません」
・・・日本人だったんだ・・・。
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_ ともりん [う〜む、相変わらずO女史、K池さんの掛け合いが面白い。もう少し文章が短くてもいいですから、(なるべく)毎日更新してく..]