もしくは「小宇宙」を感じたことは?
別にオーラでも気でもいい。
私はしょっちゅう感じている。
そうしないと認識できない人が身近にいるからである。
業務時間中、次回のプレゼンで使用するパワーポイントを作成していると、眉間にイナズマが走った。
なにかが、誰かがゆっくりと接近してくる。こちらになにかを伝えようとしている。
だが、悪意や敵意は感じない。むしろ誠実さや親しみを感じさせる。この感じは・・・。
モニターから視線を上げると思った通り「黒い、静かなる男」K池さんが1メートル位先でこちらを見ていた。
「K池さん、私ですか」
「・・・・・・・・・・・・・」
K池さんは声を立てずに静かにうなずく。右手を胸の前に出して親指と人差し指でなにかをつかむようなしぐさ。視線は私の喉辺りからブレることはない。
「・・・えーと『ちょっと時間、ありますか?』?」
「・・・・・・・・・・・・・」
K池さんは無言でうなずく。まず、両手を胸の前に揃え、すべての指を上下動させる。それから右手を小さく振って自分の席を指差す。
「・・・『パソコンでわからないことがあるから、席まで来てほしい』?」
「・・・・・・・・・・・・・」
K池さんは深くうなずき、音を立てずに回れ右。そのまま歩き去っていく。
・・・信じてもらえないと思うが、多少のフェイクの他は実話である。
蛇足
K池さんの席にて。
モニターにはパワーポイント資料が開いている。私と同じくプレゼン資料作成中のようだ。
「パワーポイント?」
振り返ってK池さんに尋ねると、うなずいてから小さな、本当に可聴域すれすれの声で答える。
「アニメーション・・・左右から・・・字が入ってくるように・・・」
説明しながら両手が胸の前で小さな軌跡を描く。
「・・・スライドイン?いや回るの?」
「・・・両方」
もう一度手を振る。確かに手首が回っている。スピンしている。
「・・・複合型?こんな感じかな?」
カチカチとマウスをクリックし、設定してみせる。
「・・・ありがとう・・・」
どうやら、リクエストに答えられたらしい。ペコリと頭を下げるK池さんに手を振って、自分の席に戻る。
そして自分の資料を作りながら考える。他の効果の時はどんな風に手が動くのだろうか?
「ワイプアウト」とか「ディゾルブ」とか「ボックスアウト」とか・・・。
とても気になるので、自分の資料には思いっきりアニメーションを組み込んでみた。
これを見たK池さんが次の資料作成時に使いたくなるように。
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