今日も終わんな〜いとか悲鳴をあげながら、仕事と格闘しているとO女史がやってきた。
「エイザ、今日、私、先に帰りますから。勝った!」
・・・そうですか、じゃあとっとと帰ってください、とは言えない。笑顔でお疲れ様です、とか返事をする。
するとO女史、手にした紙袋から小さな包みにポストイットを貼りつけ、私の机の上に置く。
「なんですか、これは」
「ん?バレンタインのチョコレート!・・・っていうか、私明日出張でいませんから」
ちょっと、ビックリ。義理とはいえこういう気配りとか一番縁遠い人だと思っていたのだが。
ここは素直にお礼を言っておこう、としたときだった。
いつもの調子でO女史はまたいらんことを言い出し始めた。
「もちろん、『義理』!」
「そりゃそうでしょう」
義理じゃなきゃ困ります。O家家庭崩壊とか泣き叫ぶ子供たち(2度ほど会ったことあり)とか、見たくないです。
「なんといってもダンナとは『らぶらぶ』ですから!!」
「・・・」
はいはい、良かったっスね。せいぜいダンナにゴージャスなチョコレートでもあげて下さい。
とか、独身独り身男性らしく他人の幸せをうらやんでいると、突然O女史がいつものネコ科じみた笑顔を浮かべる。
・・・次に来るのは「アレ」かな?
「あ、そうそう。今から『予言』しても、イイ?」
・・・たぶん、「アレ」だな。
「エイザはこれ以外にチョコレートをもらえない!」
なぜ、そんなにうれしそうなんだ、あなたは!
「・・・やな予言しますね」
一応、声を低くして言ってみる。しかしそんなことをしても次に来る切り返しは「コレ」に違いなく、現在の私には回避不可能である。
「えー、他からもらえるあて、あるの〜」
・・・今はない。でもわからないだろ!どこかにオレのことを見つめているけど、内気なせいで言い出せない娘がいるかもしれないじゃないか!!
・・・って、私はバカか・・・。そんなものは今時少女マンガにもでてこない。きっと1999年頃に絶滅宣言が出てる。現在の進んだクローン技術でも復活は難しいだろう。
「・・・は、ははははは」
現実にはうつろな笑いを浮かべるだけのエイザであった。
なぜか、バレンタインの話は出なかった。平和な一日であった。
今日も終わらないよなぁ、とかため息をついていると突然O女史が悲鳴とともに立ち上がった。
「・・・どうかしましたか?」
なにか、緊急事態だろうか。それともなんか忘れていて問題が発生しそうなのだろうか。
・・・こっちにとばっちりが来たらいやだなぁ。
困ったことにO女史は突然こっちに向き直る。顔満面に食肉目じみた笑顔を浮かべて「うふっ」と笑う。
まるで自分で隠したおもちゃを見つけたような笑顔。
・・・ひょっとして・・・
「そーいえば、エイザ、チョコレートもらえた?」
キター!!(この用法でいいのかな?)
「・・・大きな星がついたり、消えたりしている・・・わぁ、大きい!流星かな?・・・いや、違うな。流星はもっと、バッアーと行くもんな・・・」
思わず、精神崩壊を起こしてみたりする。
「あ、現実逃避してる!やっぱりだ。やっぱりもらえなかったんだ!」
あ〜、精神崩壊起こしている相手に追い討ちかけてはいけない。
「ここ暑苦しいなぁ・・・、ねぇ、出してくださいよ、ねぇ」
本当は心が寒いのだが・・・。ここからだしてくださいよー。
「かわいそうなエイザ・・・でも予言が当たりましたから!」
だから、精神崩壊起こしている相手に追い討ちかけるなよ!!
だが、O女史にそんな「騎士道精神」など期待できるわけも無く、ネコじみた笑顔を満面に広げ、ガッツポーズをとったりする。
「勝った!」
本気で「モテ王」になりたいなぁ〜、とか柄にも無いことを考えたりするエイザであった。
追伸
「エイザさんエイザさん、さっきのやつってなんですか」
平静を取り戻したころ、マリさんがやってくる。
「さっきのやつ?何のこと?」
「さっき『大きな星』とかっ『流星』っとか『暑苦しい』とかっ叫んでたじゃないですかっ」
叫んでましたか?そんなつもりはないんですが。
とりあえず、説明するのも面倒なので当たり障りのない言葉を選ぶことにする。
「・・・秘密・・・」
しかしマリさんはいつもの早口で続けた。
「今日『暑苦しい』なんてっおかしいですよっもし体調悪いならっ病院っいかれた方が・・・』
・・・だから、コレは病院では直らないのだ。
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