今日も夕方。疲労が溜まってくる頃。
喫煙所で一服していると、ロックさんがやってきた。今日も業務と怒りで疲労しているのか、妙に顔が赤黒い。
「お疲れ様です、ロックさん」
「おう、疲れてるよ」
そう言って固まった顔を何とか緩めるロックさん。表情筋まで凝っているのだろうか。過分にして「顔凝り」というのは聞いたことがないのだが。
きっとこっちの顔もこわばっているのだろうなぁ、と無理やり笑顔を作って続ける。
「つかれましたねぇ」
「ったく、タヌキの奴」
また、タヌキ課長に振り回されたのであろうか。まぁ日常茶飯事ではあるのだが。
「・・・まぁ、タヌキですから」
「・・・タヌキだからなぁ・・・」
期せずして目が合い、男二人、深いため息をついてみたりする。
「あー、イライラする」
その気持ちは良くわかります。私も昔、タヌキ課長直属で振り回されてましたから。
ここでロックさんが急に唇を歪めて嗤う。「笑う」ではなくて「嗤う」。
あまりロックさんらしくない表情だ、とビックリしていると突然とんでもないことを言い出す。
「こうなったら弱い者イジメでもするか!」
「は?!」
・・・ロックさん、あなたまで私をイジめるつもりなのか!?ヒドイ!信じていたのに!あなただけは私の味方だと思っていたのに!!
しかし、ロックさんは妙に据わった冷たい眼のまま続けた。
「あそこのトラック、横断歩道を踏んで駐車してるし」
「はぁ?」
よく見るとロックさんの眼は私を見ていなかった。背後にある窓ガラスを通して場内道路に駐車している業者さんのトラックを見つめている。
「だからさ、あのトラックに注意しに行くんだ」
「はぁ」
言っていることは至極まとも。これが「弱い者イジメ」とどう関係するのだろう?
ちなみにロックさんは「安衛(安全衛生)屋さん」なので、場内の交通ルールとかも担当しているはずである。 そのロックさんが業者に注意することはなんら問題がない。むしろ業務の一環である。
しかし、ここでロックさんはいつもと声の調子をガラッと変えて、捲くし立て始めた。
「おい、てめえよぉ!誰に断って、この場所に止めてやがるんだ!!」
・・・あの〜、何故巻き舌なんですか。それは駐車違反の注意ではなくて、よそ者のテキ屋に因縁つける地回りの口調です。
しかし、ロックさんはそのままの口調で続ける。
「横断歩道の上に止めちゃいけねぇのは常識じゃねるうぉ!!」
・・・舌をかんだらしい。口元を押さえて悶絶するロックさん。私は再度ため息をついて話しかける。
「・・・ロックさん・・・慣れないことはしない方がいいっスよ・・・」
「・・・だな・・・」
顔をしかめながら同意するロックさん。そしてうがいをするため、いそいそと喫煙所を出て行くのであった。合掌。
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ロックさんもエイザ君をイジめるのではないかと、ドキドキしながら、期待していたのですが(笑)、その矛先は、駐車違反のトラックですか。。。残念。<br>・・・・残念?<br>一生懸命働いてらっしゃる所で・・・何なんですが笑えます(笑)。これはもう「職場もの」として、作品にまとめるしかないですよね。ねぇ、クマ三郎君。
コメントありがとうございます。<br>ともりん様>「残念」ってなんだ?「残念」って。<br><br>まぁ、人間なれないこと、似合わないことはするもんじゃないってことッスよ。