朝礼後。ちょっと気になることがあったので、ヨッシーを呼ぶ。
「ヨッシー、ちょっといいか?」
ヨッシーは去年の4月入社の「ルーキー君」。引き締まった長身に禽っぽい顔つき。某国立大のマスター卒業。所謂「ホープ」ってやつである。
しかし・・・性格は「天然」。時々ものすごいボケをかます。
「なんスか?エイザさん?」
システム手帳とボールペンを手にこちらにやってくるヨッシー。基本的に「真面目」な奴である。
「ヨッシー、月間行事予定表だけどさ、3月分、書き込んどけよ・・・タヌキに怒られる前に」
事務所の壁に取り付けられたホワイトボード。総務の月間行事を書き込むのはヨッシーの担当だが、最近どうも忘れがちである。タヌキ課長に余計なことを言われる前に指摘してやるのが先輩の務めってものだろう。
「あー、そうですね。ありがとうございます」
長身を折り曲げるようにして一礼するヨッシー。おもむろに書いてある文字を消し始める。ところが行事だけでなく、土日につけられた赤丸まで一緒に消してしまう。
・・・ああ、もったいない。2月と3月は曜日一緒なのに・・・。
と、そこでヨッシーが振り返って尋ねてくる。
「で、3月1日って何曜日でしたっけ?」
・・・マジですか?
3月1日って明日ですよ。今日が火曜なら明日は水曜日です。
ちなみに手に持っているのはなんですか?普通手帳にはカレンダーが付いていると思いますが。
そもそも2月と3月は曜日は一緒です。違うのは4年に1回、オリンピックイヤーだけです。
・・・頭の中でなにか呪文の様な声が聞こえてくる。
『ゲル・ギム・ガン・ゴー・グフォ!』
ヨッシーの脳を抉り出し、表面の皺の数を数えたくなる衝動に駆られる。落ち着け、私。こいつは「天然」だが「バカ」じゃない!たぶん、きっと・・・。
「2月と一緒だろ」
なるべく動揺を出さないよう、明るく答える。だが返答はその斜め上を行くのである。
「そんなはず、ないっスよ!」
本気で言ってるのか・・・。本気なのか、そうなのか?!一瞬だけ目の前が真っ白になる。落ち着け、私。こいつは「バカ」じゃない。「天然」なんだ。きっとそうだ。たぶんそうだ。うん、間違いない。
「一緒だぞ、基本的には。」
ヨッシーはキョトンとしている。そのまま真剣そのものの顔で聞き返してくる。
「なんで一緒になるんですか?」
・・・こいつ殴っていいですか?斬っていいですか?焼き払っていいですか?灰を多摩川に流していいですか?
だが、誰も答えてくれない。そうだ、落ち着け、私。こいつは根っから「天然」なんだ。真面目でいい奴なんだ。「バカ」かもしれないが「天然もの」なんだ。
しかし、私の声は理性を裏切った。心の方に忠実だっただけかもしれないが。
「2月は28日しかないからだァァァッ!28は7で割り切れるだろうがァァァッ!」
「・・・・・・。あっ!」
数秒の沈黙の後、ヨッシーは手をポンッと打つ。満面の笑顔で答える。
「そうっスね!今、気がつきましたよ!」
そしてそのまま続ける。
「エイザさん、スゴイッスね!」
・・・頭の中でなにか呪文の様な声が聞こえてくる。
『ゴー・ゴー・ゴルディーロ!デストラクション・ファイヤー逆噴射!』
ヨッシーに対して胸の奥に燃え盛る炎を叩きつけたい衝動に駆られる。落ち着け、私。こいつは・・・・・・。こいつは・・・、こいつは・・・。あかん、もうフォロー不能です。
「この、大バカものォォォッ!」
しかし、ヨッシーはそんな私の絶叫など気にせず、ニコニコと2月のカレンダーを見ながら、土日に赤丸をつけていくのであった。
「いやー、確かに2月と3月は曜日、一緒ッスね〜。便利ッスねぇ〜」
・・・もう、いい・・・。
ふと気がつくと、いつの間にか私の後ろにマリさんが立っていた。
「エイザさん、苦労、してますねっ。でもー、私たちはー、いっつもー、苦労してるんですっ!」
隣で深くうなずくウェバルさんを見ながら、大きくそして深く、ため息をつくエイザであった。
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すると今年はオリンピックイヤーだから(以下略)
トラベリオンを呼んでどうするんだろう?
コメントありがとうございます。<br>クマ三郎様>そういうツッコミする奴には「ファイヤー・ボルケーノ」だ!<br>しのp様>トラベリオンなら「轢く、撥ねる、殴る、縛る、焼き払う」の5つが、これ1台で簡単に出来るんですよ!
なにこのスーパーボケ役wwwww
ぱ様>遠くで見ていれば笑えますが、ボケに巻き込まれると脳の血管が切れそうになりますよ、とは指導担当のウェバルさん談。