給湯室でお茶を淹れていると、後ろで小さな悲鳴があがる。なんだ?どうした?
振り向くとマリさんが洗濯機の中を覗き込んで途方にくれている。ふと、目が合う。急にニコリと微笑むマリさん。
「エイザさんっ、教えてくださいっ!」
「なにを?」
「えーと、洗濯機のー、ことなんですけどー」
・・・設備担当になったことはないんですが。何故、私に訊きますか?
「えー、機械にー、強そうなー、感じがしますしー。なんていってもー、OA担当じゃないですかー」
違う違う、洗濯機はOA担当の業務じゃない〜。OA機器でもない〜。
それはともかく、どうかしましたか?
「洗濯機のー、なかにー、水がー、溜まっているんですっ」
言われて洗濯槽の中を覗き込む。洗濯物はひとつも入っていないのに、なぜか水が10cm程、溜まっている。
「どうやったらー、水がー、抜けるんでしょうか?」
洗濯機の操作パネルを触りながら、マリさんがつぶやく。いや、マリさん?聞きたい事がことがあるのだが・・・。
「うーん、最近のー、洗濯機はー、よくー、わからないですねー。これかなー?」
マリさんがスイッチを押す。するとドババーッと注水が開始され、なお一層の水が溜まっていく。
「あれっ、あれっ、ちがうっ、どうしよう」
早口モードに切り替わり、慌てて他のスイッチを押し始めるマリさん。そりゃそうだよなぁ。スタートボタン押したら、水が入ってくるのは当たり前である。コーラを飲んだらゲップが出るくらい、確実である。
「えいっ、えいっ!」
手当たり次第にスイッチを押すマリさん。ピーッとアラームがなって注水が止まる。ついでにパネルのLED表示も消える。いきなりメインスイッチを切ってしまうのはどうか、と思うが。
「水はっ止まりましたっ!で、水を抜くにはっ、どれを押せばいいんでしょうかっ」
「排水ボタンっていうのは、見当たらないね。ところでさぁ・・・」
「あ、わかりました!」
人の話をさえぎって、頬にあてていた人差し指を振りながらマリさんが叫ぶ。
「脱水ボタンをー、押せばー、水が抜けるはずっ、えいっ」
ピッと脱水ボタンを押し込む。ジョロジョロと洗濯槽に溜まった水が抜けていく。
「ふー、これでー、ひと安心ですねー」
大きく息をついて、マリさんが洗濯機のフタを閉じる。満足げな笑顔を浮かべるマリさん。いや、マリさん?聞きたいことがあるのだが・・・。
しかし、しばしの沈黙の後、マリさんが叫ぶ。
「えー、どーして」
洗濯機がゴトゴトいいながら振動する。そりゃ、脱水ボタンを押せば、脱水が始まるのは当たり前だろう。ビールを飲んだらトイレに行きたくなるくらい、確実である。
空の脱水槽は高速回転を始め、風切り音はヒューヒュー漏れ出す。慌てたマリさんが再度スイッチを押す。ピッ!。また電源を落としてしまうマリさん。プツン、ガタガタガタッーという感じで洗濯機が止まる。
「エイザさーん。どうしたらー、いいんでしょうねー」
洗濯機相手に奮闘というか狼狽というか・・・。そんなマリさんに対して聞いてみる。
「なぁ、洗濯機の中に、水が溜まっていると、なんかデメリットでもあるのか?」
動きが止まるマリさん。そしてのろのろと顔をあげる。
「デメリットー、ないですねー・・・」
「ひょっとして漬け置き洗い用に、水が溜まるようになっているのでは・・・」
「その可能性もー、ありますねー」
そのまま時間が止まる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そして、時は動き出す。
「水がっ溜まっているの知らなかったのでっビックリっしたんですっ普段使わないんでっでもウチではっちゃんとっやってますっ本当っですっ」
恐慌状態のマリさんを眺めながら、なぜか、癒し気分に浸れてしまうエイザであった。
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>「えいっ、えいっ!」 テラモエスwwwww
>「えいっ、えいっ!」 <br>萌え〜〜〜。<br>>癒し気分に浸れてしまうエイザであった。<br>それが萌えへの第一歩なのだよ。
コメント、グラッツェです。<br>…この世界のお礼シリーズもどこまでもつのやら…<br>それはともかく「マリさん」はO女史、K池さんに続く本ブログの看板キャラになってきたなぁ。
何やらえらい雰囲気が変わっていたので、アセったよ。