スペインの赤い風の中で、私はその老人に出会った。
灰色にくすんだ頭髪と髭、目尻に刻まれた深い皺。老人が過酷な長い旅を続けてきたことを物語っていた。
老人は言った。もう疲れた、自分の代わりにこいつを歩かせて日本まで届けて欲しい、それが「約束」なのだ、と。
私は黙って頷き、「約束」を引き継いだ。
老人から受け取ったプロポのスイッチをいれ、左手の親指でコントロールレバーを前に倒した。
それと同時に、地面に転がっていたカブトムシがのそのそと6本の足を動かし始めた。
このプロポで機械仕掛けのカブトムシを歩かせて、日本まで行くのだ。それが「約束」だった。
そして旅が始まった。
赤く錆びたレールに沿って、カブトムシの背中を見守りながら赤い砂漠を横断した。
吹き降ろされる白い風に逆らい、カブトムシの背中を見つめつつ氷の山々を越えた。
黒い泥に足を取られながら、カブトムシの背中を見落とさないようにくすんだ湿地帯を歩き続けた。
そして、長い長い旅路の果てに下関にたどり着いた。
貨客船のタラップをカブトムシに渡らせながら、最後に降りるとそこには一組の家族が待っていた。
若い夫婦と小学生くらいの少年。
少年は泥にまみれ、擦り切れて白くなったカブトムシを拾い上げて尋ねた。
本当に、世界を一回りして帰ってきたのか、と。
私は無言で頷き、少年にプロポを返す。そして夫婦に一礼してそこから立ち去ろうとして背を向けた。
その時、胸の中からなにか熱いものがこみ上げてくる。
瞼の裏からも涙が溢れてくる。
なにかをやり遂げた思いに飲み込まれながら、ただ涙を見せないよう、そこから歩き去った。
そして、目を覚ますといつものベッドの中。
なぜか、涙で枕を濡らしている。
鮮やかに残っている夢の記憶をたどりながら、自問する。
・・・私は、なに感極まって泣いているんだろうか、と。
それと同時に考える。夢の中の感動はやはり夢の中にしかない偽者なのか、それとも・・・。
というわけで、今回は「夢オチ」。いったい、どんな思いがこんな夢を見せたのか。誰か夢判断、プリーズ!
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そりゃあいつかはやってみたい願望ってことでしょ。別名「逃避行動」ともいうが・・・
ダメだっ…仮面ライダーカブトのサイドストーリーにしか見えないっ
序盤は奪戦元年では。「たっち」って。<br>後は昔、タイムボカンのおもちゃが買ってもらえなかったとか。
コメント、おおきに。<br>けんけん様>確かに砂漠とか乾いた風には心ひかれるものが。<br>でも、逃避ではないと重いたいなぁ。<br>ぷろふぇっさーK様>「おれはこの時を待っていた!おばあちゃんの言った通りだ!」って感じですか。<br>クマ三郎様>なぜ君にかかるとすべてが「ギャグ」になってしまうんだ?ドライでクールなシーンだったんだよ、夢の中では。