私はPCについては「シロウト」である。自分でPCを自作したこともないし、プログラム言語も使えない。フローチャートも描けなければ、HTMLも書けない。ただの「ユーザー」さんである。
しかし、なぜか総務のOA担当なんぞを押し付けられている。そして事務所内の人々から、ExcelだのWordだの、Powerpointだの操作法がわからない〜と、たびたび呼びつけられるのである。
「おい、エイザ!」
ムジナ部長が突然私を呼ぶ。いつも苦虫を噛み潰したような表情のムジナ部長だが、妙に優しげな、苦笑いの顔。こういうときはOA操作がわからなくて、途方にくれているときである。
「すまんが、教えてくれ。このパワーポイントに写真を貼り付けたいんだが・・・」
「はぁ、元データはどこですか?」
「共有ドライブの○○だ」
「えーとですね、それなら、ここをこうやってこうして、こうすれば・・・」
「ついでだ。これもやってくれ」
はっきり言ってほとんど「作業代行」または「下請け」である。
そんな風に振り回された夕方。疲れきった状態でデータの整理をしていると、遠くで誰かが呼んでいる。
「おい、エイザ!エイザ!・・・エイザさん!エイザさん!?」
のろくさを首を90度左に回すと、妙に優しげな表情をしたムジナ部長が席で手招きしている。・・・気がつかなかった。慌てて立ち上がり、ムジナ部長の席に行く。
「スイマセン。なにか?」
「教えて欲しいんだが。インターネットを開くときには『ツール』から開くんだっけか?」
は?Webにつなぐのに『ツール』?何のことだ?訳わかめ状態の私に対して部長が追い討ちをかけて来る。
「それとも『アクション』だっけか、『表示』だっけか?」
ますます訳わかめ。「アクション」といえば「Big−O」。いや「アクション仮面」とか。
頭の中で始まった巨大ロボットVS仮面のヒーローの異種格闘技戦を振り払い、できるだけ平静な、穏やかな、丁寧な口調で聞いてみる。
「あの、インターネットってインターネットですよね」
我ながらバカな質問である。しかし部長はまったく動じずに深くうなずく。
「えーと、IE、開いてます?」
部長は眉間にタテジワを刻み、こちらをにらむように答える。
「『アイ・イー』ってなんだ?」
心の中にものすごい不安とドス黒い何かが湧き上がってくるのをムリヤリ押さえつけ、できるだけ平静な、穏やかな、丁寧な口調で訊いてみる。
「あの、画面見せていただいてもよろしいですか?」
「ああ」
失礼させていただいて部長の席の後ろに回りこみ、PCの画面を覗き込む。やはり、やはり、やはり。
画面に開いているのはOutlookのみ。ポインタがメニューのツールに合わせられておりメニューが開いている。
「・・・インターネットを見るときはですねぇ。まず一番下のスタートボタンを押して、『インターネット』って書いてあるアイコンを選んでください。次に上のメニューから『お気に入り』を押してですね・・・」
全身を駆け巡る脱力感に耐えながら、操作法を説明する。それがひとまず終わった後、部長はこう、のたもうた。
「メールからインターネットは見られんのか?はじめて知った・・・」
要するに今まではメールについてきた「リンク」しか使ったことがない、という訳なのだろう。
そして私程度がOA担当が勤まる理由を痛いほど理解したのであった。
とはいえ、デジタルディバイド、ひどすぎません?
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どこの職場も同じですな。ウチも「作業代行」してるしね。<br>「パスワード」と「メールアドレス」の区別がついてないおぢさまが相変わらずいらっしゃったり。<br>「そんな横文字ばっか並べられても分かんねぇよ」ごもっとも。<br>問題は家電メーカーや技術者(所謂「専門家」)が自分たちだけに通じる「スラング」としてPC用語を使ってるってことです。日本人特有の傾向なのか、ある種の技能集団(仕事にしろ趣味にしろ)ができると自分たちだけに理解可能な「スラング」というか「符丁」のようなものを使いたがるんですね。(例えば鉄ヲタどおしの会話などまず一般市民には理解できまいorz)そういうことで仲間内の結束を確認するというか、他者を排除して優越感に浸るようなところがあるんですね。で、一般の方に分かるようにPC用語を翻訳できなかった(あるいは考えもつかなかった)と。<br>ま、PC用語なんて簡単な英語ですから落ち着いて読めば理解できなくはないんだけど。「横文字」そのものにアレルギーを起こしてるようだとつらいですね。<br>長文すみません。お互いがんばりましょう(比較的若いってだけで資料作成を押し付けられがちな)あいあんでした。
自称専門家から言わせてもらうと言葉の問題じゃないね。鉛筆をどう使うか、未開の原人に渡したら想像もつかないだろう。筆記用具で文を認めさせるために、自称先進国はかなりの労力と国家予算を注ぎ込んでいるわけだが、それより数段複雑なメタファが必要なPCアプリケーションにロクな公的教育が行われていないのだから「あたりまえ」ですな。
要はアプリケーションの使い方なんて瑣末な問題なんだよ。鉛筆がクレヨンでもシャーペンでもいいように、アイコンやマウスの名前を覚えたから「仕事ができる」わけじゃないでしょ。仕事をするには明確な意思の力と実行力が必要で、それがある人はワープロだろうがパソコンだろうがすぐ使えるようになるんだなこれが。逆に「すぐ人に聞く」奴は、そもそもPCでなくても「面倒くさいことは何とか他人にやらせよう」としているはずだが?
専門家の方々には大変失礼な物言いでした。すみません。<br>メーカーのカタログにしてもTVCMにしてもPC用語をステータス的に乱用しているのが鼻についていたので。<br>>「面倒くさいことは何とか他人にやらせよう」としているはずだが? <br>たしかにそのとおりです。年齢とか性別とかで線引きをしてステレオタイプに分類することはしませんが(したくなるが)、同じ「グループ」であっても向上心をもった方はそれなりに使いこなしているわけで、とどのつまりは個々人の意欲に収斂されていくんでしょうか。
PCの外周りの素材のことなら詳しいのかもしれん<元化学科(材料化学専攻)
コメント、恐悦至極(本当にネタ切れ)。<br>あいあん様、ぱ様>興味深い御意見ありがとうございます。<br> エイザ的には「もうウチのムジナ部長ったらインターネットの見方も知らないの、バカでしょ」くらいの意味合いしかなかったのですが、いろいろ考えるヒントになりました。<br> まず、相手の目的が「教えてもらうこと」なのか「作業させることなのか」。<br> 次は、教えた当方が「納得できる」か否か。逆に言えば相手に気分よく「教えてもらう」または「作業させる」ことができるか。<br> 要は「コミュニケーション」と「マネジメント」の問題なんだよね、文系サラリーマン的にいうと。
ぷろふぇっさーK様>化学というと、「素材」より「爆発!」とか「溶解!」とか「凍結!」とかそんな物騒な言葉が先にうかんできます。きっと近くの化学専攻者の人徳でしょう、ね、クマ三郎くん。
ま。あいあんさんの言うことは良くわかるんだけどね....ただむしろ現実は逆かなと。<br>つまり専門用語で煙に巻くよりPC屋は「本当は初心者にこそ必要なものを言わない」<br>ことの方が多いんじゃないかと。<br>具体的にはWindowsXP搭載なのに512MB以下のメモリしか積まないマシン<br>(256MBなど論外!)が沢山売り出されてますよね。PCに詳しくない人こそ<br>高スペックマシン買わなくちゃならいんだけどね。