カノープス(Canopus)は、竜骨(りゅうこつ)座α星<注1>の固有名です。
詳しい説明は後でしますとして、天文ファンの間では割と有名で(日本から)なかなか見えない星の代表選手です。私は以前(99年)清里に行った時、南の空ぎりぎりの所を動いていくカノープスを、初めて見ました。
長いこと、清里のような空のきれいな所でしか見ることができないと思っていました・・・が、この12月中旬良く晴れた晩、ふたご座流星群を見に自宅近くにある(お気に入りの)観望ポイントに行った時、とも座の星(画面右上の星)が見えたのでひょっとしたら"横浜でも見えるのでは?"ということでチャレンジしてみました。天文ナビソフトで調べてみると、地平線からの高さが1.6°これは大変だろうと思いきや、晴れれば思った以上に簡単に見ることができました。しかし、かなり見つけるのは大変ですけどね。腕を伸ばした親指の幅よりちょっと高いとこにありまして、横浜ランドマークタワーの方が高かったです。
12月22日から翌1月8日まで観測しまして、空のコンディションちょっとでも悪いと見えない、オリオン座が見えててもカノープスは見えない、関東を吹きぬけた風が太平洋で再び雪雲となってカノープスを隠すとか(涙)、いろんなことを発見することが出来ました。
横浜の夜は明るいですね。写真の方は、20分以上露出したものはほとんど失敗してしまいました(汗)。左の光の固まりは社宅(昔住んでいました)です。
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カノープスは、おおいぬ座のシリウス(−1.5等)<注2>に次ぐ全天2位の明るさの恒星(−0.7等)で、太陽から80光年の距離にあります。オリオン座の右下にあるおおいぬ座のほぼ下(南)の方角にありまして、カノープスとは、ギリシャ神話に登場する水先案内人(トロイヤ戦争で活躍・死んだとされる)の名前からきています。
かつて中国の都であった長安や洛陽で、この星が地上すれすれに見える時を「天下泰平の吉兆」とされ、またなかなか見ることのできないこの星を「一目でも見ると長生きができる」と言い伝えられて、「南極老人星」「老人星」「南極寿星」などとめでたい星として呼ばれています。
日本でも、同じように南の地平線すれすれに現われます。蔵王で見えたという報告がありまして、ここより北(東北地方中部〜北海道)では見えないそうです。「他の星たちは天を巡るのにこの星は、出てきたかと思うとすぐに沈んでしまうオウチャクな奴だ」ということで、「横着星」「無精星」「道楽星」などとあまりいいイメージでは呼ばれていなかったみたいです。また「入定星」「布良星」などと呼ばれています。
<注1> その星座で明るい順に、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)・・・と符号つけられています。明るい星になると固有名が着くことがあります。シリウス(おおいぬ座α星)、ベテルギウス(オリオン座α星)など。 <注2> 目で見て最も明るい星を1等星、やっと見えるかすかな星を6等星として、明るさがランクづけされています。1等星は6等星のちょうど100倍の明るさがあり、1等級違うと2.5倍明るさが変わります。1等星より明るい星を、0等星、-1等星・・・・、6等星より暗い星を、6等星、7等星・・・・、と表しています。ちなみに太陽は-26.7等星、満月は-12.6等星になります。
<参考文献>
・「宙(そら)の名前」 林完次
・スカイ・ウォチング(朝日コスモス別冊) 朝日新聞社
・スカイ・ウォチング事典 朝日新聞社