越美北線

最終更新日2008.09.22.


● 基本データ

 越美北線(えつみほくせん)は北陸本線の越前花堂(えちぜんはなんどう)から東南東に進み九頭竜湖に至るJR西日本の地方交通線(ローカル線)である。沿線には、戦国大名の朝倉氏の居城があった一乗谷、越前の小京都と呼ばれる越前大野、そして九頭竜湖など観光地が多い。路線の起点は越前花堂だが、全ての列車は福井を発着する。

 距離の長い路線の建設の際には、たいてい路線の中央部に工事の難所が存在し、○○北線(あるいは○○東線)と○○南線(○○西線)のようにそれぞれ起終点の側から建設がはじまり、中央部をつないで全通、○○線となることが多かった(例としては、三江線など)。
 越美とは福井県の旧名越前国と岐阜県の旧名美濃国のこと。つまり、この路線は福井県と岐阜県とを結ぶ路線の北側であったことが分かる。具体的には福井駅と高山本線の美濃太田駅の間を結ぶ鉄道として計画された路線で、路線が建設されたのは、南側、つまり越美南線の方が早く、大正12(1923)年10月5日に美濃太田-美濃町(現;美濃市駅)間が開業、昭和9(1934)年8月16日に北濃まで延伸された。一方、越美北線の建設は戦前の昭和10(1935)年頃からはじまっていたが、戦争の激化で中断、昭和35(1960)年12月15日になって南福井-越前花堂-勝原間が開業した。その後、昭和47(1972)年12月15日に九頭竜湖まで延伸開業した。
 しかし両者の間、つまり福井-岐阜県境には急峻な両白山地が控えていて、またそれぞれが赤字を抱える状況で、この間の路線建設はついになされることはなかった。国鉄解体前夜の昭和61(1986)年12月11日、越美南線が第三セクターの長良川鉄道に移管され、越美北線はJR西日本になった。婚約までしていたのに、片方が他家へ嫁入りしてしまったような感があるので面白い。このようなケースは全国でも珍しい。両者の間は約25km、いささかもったいないような気もする。両者の間にはバスの便もあったが、平成14(2002)年に廃止されてしまい、完全に交流がなくなっている。

 北線も南線も、自然災害に見舞われることが多かったが、北線は更に冬の豪雪も加わる。特に、平成16(2004)年7月に発生した福井豪雨によって長期不通になったのは記憶に新しい。九頭竜川水系足羽川に架かる5つの橋梁が流失し、7月18日に越前花堂-越前大野間が不通となった(やがて、一乗谷-美山間に不通区間が狭まる)。復旧工事は翌年の平成17(2005)年10月17日にはじまり、平成19(2007)年6月30日一乗谷-美山間が運行で再開され3年ぶりに全面開通した。一時は、新線建設と同程度の費用がかかるとされ、路線存続が危ぶまれる状況で、この全線復旧。関係各位の不断の努力に敬意を称したい。


越前花堂-九頭竜湖間 52.5km

※ 全線を走る列車は日に4往復しかなく、また日中3〜4時間ほど
運転されない時間帯もあるので、乗りつくしには綿密な計画が必要。

[車窓の楽しみ方]
 日本海から南北に細長く広がる福井平野には3本の川が流れ込んでいる。その3本は福井中心部で合流し、北に日本海に注ぎ込んでいる。南から流れてくるのが日野川で、これに沿って北陸本線が走り、東から流れてくるは九頭竜川で、これに沿ってえちぜん鉄道が、南東から流れてくるのが足羽川で、これに沿って走るのが越美北線になる。

 越美北線の全ての列車は福井発着となるので、福井から来た列車は、北陸本線と分岐、越前花堂の越美北線用のホームへと滑り込んでくる。ホームも北陸本線に対して斜めに配置され、50mほど離れているので、まるで違う鉄道の乗り場のようだ。越美北線のホームから福井方面を臨むと北陸本線の線路がかなり離れているのが分かる。
 越前花堂からしばらくは福井の市街地を走っていくが、国道8号線や北陸自動車道を通り過ぎると、とたんに水田地帯が広がりだし、この中をのんびりと進んでいく。越前東郷を出てしばらくすると足羽川が近づいてきて、一乗谷を過ぎると、これを渡るようになる。一乗谷といえば、戦国大名朝倉氏の館があったことで有名だが、この館は、駅南南西約2kmの所にある。ここから、谷が深くなり、線路は足羽川を何度も渡り、高度を稼いでいく。大水害の影響で、架け替えられた新しい鉄橋が、その水害の影響の大きさを物語っているが、その下では、釣り人が、のんびり糸を垂れ鮎をねらっている。もう日常は戻ってきているようだ。こうして美山に着く。美山からは国道158号線と共に足羽川を離れ、国道と共にのんびりとした風景の中を進んでいく。計石を出てからは、勾配がきつくなり水田の横を駆け上っていく。トンネルを抜けると、次第に下り勾配になり、市街地がはじまると、越前の小京都で城下町だった越前大野に着く。これまでの、のんびりとした光景に比べて、とても大きな街であるように感じる。

 越前大野を出発して、市街地をゆっくり走っていき、九頭竜川の支流をいくつか分かっていく。このように路線は、足羽川水系から九頭竜川水系に移り、以降九頭竜川に沿って終点を目指していく。下唯野を出ると鉄橋を渡り、しばらく川から離れた林の中を行くが、すぐに川に近づき、そしてトンネルになる。トンネルを抜けると、九頭竜峡と呼ばれる渓谷が広がるので驚かされる。また、鉄橋を渡って勝原(かどはら)となるが、この鉄橋も防護柵がないので、スリルがある。勝原付近の水田の中に、夏ひまわりを植えている畑があったが、車窓のよいアクセントとなっていた。勝原からトンネルが続き、数分も続くトンネルを抜けると越前下山。再び数分トンネルの暗闇が続くと、終点九頭竜湖に到着する。
 九頭竜湖は総ヒノキ造りのロッジ風の駅舎で、出札口もなかなかよかった。また、駅は観光物産センターを兼ねていて、駅東側に併設している。そして、この付近で恐竜の化石が見つかったことから、越美北線に並走していた国道158号線は恐竜街道と名づけられ、駅と国道に挟まれた公園には恐竜が展示されている。また駅名となった九頭竜湖だが、日本で3番目の大きさのダム湖である。しかし、駅から南東約4kmほどと離れた所にあるので、観光するためには、バスか、駅前に停まっているタクシーを利用しないとならない。
 車窓は、進行(九頭竜湖)方向左右差がないが、越前大野までは左、その先は右が楽しいかもしれない。



● 乗りつぶし記録

  ・2008.07.20. 近畿完乗作戦で、越前花堂→九頭竜湖間に乗車。完乗達成。
  ・2008.07.20. 同、九頭竜湖→越前花堂間に乗車。往復完乗達成。



● 駅舎写真

越前花堂駅(2008.07.) 越前大野駅 九頭竜湖駅(2008.07.)



(ともりんが)行ってみたい撮影ポイント

 足羽川に架かる鉄橋を走る列車が撮影できる市波-小和清水間。九頭竜湖川の渓谷に沿って走る列車が撮影できる下唯野-柿ヶ島-勝原間。のんびりとした水田地帯を走る列車が撮影できる美山-越前薬師間など。



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