大船渡線

最終更新日2010.03.25.


● 基本データ

 大船渡線(おおふなとせん)は、東北本線の一ノ関駅から気仙沼、陸前高田を経由して、盛駅に至る地方交通線(ローカル線)である。「我田引水」ということわざがあるが、明治期の鉄道敷設は政治的思惑から路線が曲げられることが多く、これを鉄道の世界では「我田引鉄」と呼ばれている。この「我田引鉄」で有名なのが、この大船渡線である。
 仙台から東北本線を経由して気仙沼までを結ぶ路線として、建設が計画されたのは明治25(1892)年のこと。一ノ関から気仙沼までは、ほぼ一直線で敷設される予定だったが、陸中門崎から北へ摺沢方面に捻じ曲げさせたのが、岩手出身の政治家で当時の政友会総裁の原敬。大正9(1920)年の総選挙で岩手県全県議の独占を狙い、政敵である憲政会の千厩の候補を落選させ、摺沢の候補を擁立する目的からであった。こんな中建設がはじまり、一ノ関-摺沢間が大正14(1925)年7月26日に開業した。路線が開業した当時の首相は憲政会の加藤高明で、千厩の人々の誘致活動もあり、今度は路線は南に曲がり、摺沢-千厩間が昭和2(1927)年7月15日に延伸した。この後、路線は東に建設され、昭和3(1928)年9月2日折壁、昭和4(1929)年7月31日気仙沼まで延伸された。この政争によって路線が見事な凸型になり、以来鍋蔓(なべづる)線と呼ばれるようになった。ちなみに、大船渡線とは反対に地元自治体の意見を一切聞かずに、路線を真っ直ぐ通しているのが、明治22(1889)年4月11日に開業した甲武鉄道(現;中央線)の新宿-立川間である。
 昭和7(1932)年3月19日上鹿折、昭和8(1933)年2月15日陸前矢作、同年12月15日細浦、昭和9(1934)年9月3日大船渡、昭和10(1935)年9月29日盛まで延伸され、全通した。この凸型の部分がが竜の背中に似ていることや、沿線各地に竜にまつわる伝説が残っていることにちなんで「ドラゴンレール」の愛称が付けられるようになった。下の略図も何となく竜に見える気がする。
 このように路線が長くなってしまった為に、路線の目的であった仙台と気仙沼を結ぶという使命は、昭和43(1968)年10月24日に全通した気仙沼線に奪われてしまったが、路線が捻じ曲げられたおかげで、日本百景にも指定された名勝猊鼻渓にも通じるようになった。残念ながら、車窓からはその入口までしか見えないが。また、気仙沼からは三陸海岸に沿って走るので、山風景、海風景の両方が楽しめる魅力的な路線となっている。
 また、気仙沼からはじまる三陸縦断鉄道(気仙沼-大船渡線→盛-三陸鉄道南リアス線→釜石-山田線→宮古-三陸鉄道北リアス線→久慈-八戸線→八戸)の南端を担う路線となっている。



一ノ関-盛間 105.7km

※ 全線を乗るためには2時間前後かかるので、乗りつくしはやや大変である。
また盛から折り返す列車は、停車時間が長いので、三陸鉄道南リアス線などを利用するのもよい。



[車窓の楽しみ方]
 一ノ関を出発すると東北本線と分岐し、東北新幹線の下をくぐり、一路東にむかう。陸中門崎までの区間は、小高い山の中を縫うように走っていくので、時には北海道のような原野が広がることもある。こうして北上川を渡ると、短いトンネルに入り、大きく向きを変えて陸中門崎駅に着く。陸中門崎から先は北へ、北上川の支流砂鉄川に沿って走るようになり、進行(気仙沼)方向右手に(石炭?の)工場が見えてくると猊鼻渓駅に着く。この駅は、国鉄時代最後のダイヤ改正でできた比較的新しい駅で、日本百景に選ばれた景勝地猊鼻渓へは駅から400m程の所にある船着場から、さらに砂鉄川を上らないとならない。
 猊鼻渓からは、東に進路を変え山の中を走るようになり、家屋が増えてくると摺沢駅になる。摺沢からは南に向きが変わり、谷を駆け下るようになる。徐々に谷の幅が広がり、谷の西側に線路、東側に国道と分かれて見えるようになってくる。その(それほど深くない)底には水田が続く。そして、大きくカーブし再び東に向きを変えると千厩駅になる。千厩からは岩手-宮城の県境を越える為、徐々に高度が上がっていく。そして県境付近にあるのが新月(にいげつ)駅。峠の上にある駅なので、周囲に集落は少なくまた空も澄んでいるので、夜には星空が広がる。また、時期を選べば、新月で満月を楽しむなんて構図も撮影することもできる。県境を越え、宮城県に入ると、下り勾配を大川とともに駆け下り、気仙沼に着く。
 気仙沼を出発すると車窓に市街地が見えるが、短いトンネルも続く。鹿折唐桑(ししおりからくわ)駅を出発して、しばらすると市街地も切れ、畑作地帯が広がるようになる。この付近より、鹿折川に沿って走るようになり、徐々に谷が深くなってくる。また、川幅が狭くなった鹿折川を何度か渡る。長い飯森トンネルを越えると、再び岩手県に入り、針路を東に変え、気仙川の支流矢作川に沿ってどんどん高度を下げていくようになる。高度がさがるとともに、平野が広がり広大な水田となっていく。そして気仙川を渡ると陸前高田に着く。
 陸前高田と出発すると、いよいよが見えるようになってくる。脇ノ沢駅付近ではやや高い所を走るようになるので、遠くまで見通せて楽しい。一方、山側には水田地帯が広がり、穀倉地帯であることも分かる。小友駅を出ると、再び進行方向を北に変え、終点を目指す。ここから先は、リアス式海岸の大船渡湾に入っていくようになる。この付近は深く入り組んでいるので、夜でもリアス式海岸だと分かる。漁船が増えてくると大船渡駅、そして三陸鉄道と合流し、その車輌などが見えてくると、終点盛駅に到着する。駅構内では岩手開発鉄道の貨物列車なども見ることができる。
 車窓は、全般的に進行(盛)方向右手が楽しい。



● 乗りつぶし記録

  ・2007.11.23. 東北完乗作戦で、気仙沼→盛間に乗車。
  ・2007.11.23. 同、盛→脇ノ沢/小友→大船渡→新月→気仙沼間に乗車。
  ・2007.11.24. 同、気仙沼→猊鼻渓→一ノ関間に乗車。完乗達成。
  ・2010.03.21. 東北乗りつくしで、一ノ関→盛間に乗車。



● 駅舎写真

一ノ関駅(2007.11.) 真滝駅(2007.11.) 陸中門崎駅(2010.03.)
猊鼻渓駅(2007.11.) 摺沢駅(2010.03.) 新月駅(2007.11.)
気仙沼駅(2007.11.) 上鹿折駅(2010.03.) 脇ノ沢駅(2007.11.)
小友駅(2007.11.) 大船渡駅(2007.11.) 盛駅(2007.11.)



● おすすめ撮影ポイント

 撮影ポイントは、JR線路線別撮影地大船渡線にて紹介している。(このページに戻る際は、ツールバーの"戻る"を使って下さい))。



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