だから、こんなグチをこぼしたりもする。
「人生、夢も希望もないもんねぇ」
だが、突然言われるとビックリする。カレーをかき混ぜるスプーンを止めて顔を上げて尋ねる。
「夢、ないんですか?」
けらけらと笑いながらO女史は答える。
「ないよぉ、夢なんて」
夢などいくらでもありそうな気がするが。例えば『ギャングスターになって街を良くする』とか『みんなの心を洗濯物みたいに真っ白にする』とか『海賊王にオレはなる!』とか『全国制覇!!』とか『銀のエンゼルを5枚集める』とか。
例としては不適当なものばかり並んでいるような気もするが。
「さびしい人生ですね」
「人生なんてこんなものですから。残念!!」
O女史は『ギター侍』の「残念!!」というフレーズがお気に入りである。
上司に対してまで「予算取ってませんから。残念!!」とか言うのはどうかと思うが。
ついでに言えばちゃんと「切腹!!」もして下さい。
「まぁ、この年になれば分かる・・・ってエイザ、私と年かわんないじゃん」
「でも、私には夢がありますよ」
「エーッ、夢あんのぉ!?信じらんない」
何故、そんな驚くのだろう。
「あります。黄金に光輝く夢が」
O女史がいつものネコじみた笑顔を浮かべて尋ねる。
「なになに、おねーさんにだけ教えて」
「いやです」
ここで口を滑らせたら一生後悔する。なんかそんな気がする。そんな確信がある。
「えー、ケチ。じゃ当てるから」
わざわざこめかみに指を当てて、考えるポーズ。意味あるのだろうか、そのポーズ。
「川崎で女の子5人くらいはべらせて豪遊!!」
・・・なんて俗っぽい回答だろうか。私はそんなに俗っぽく見えるのだろうか。ちょっとへこんでしまう。
「違います」
「うそー、じゃ10人くらい」
人数が倍になればいい、というものではない気がする。
「いや、根本的に違いますから」
再度、考えるポーズ。おそらく効果はないぞ、それ。
「わかったァ、六本木で10人くらいはべらせて・・・」
「いいかげん、その『はべらせる』から離れません?」
「いや、男の夢ってこんなもんでしょ?」
・・・男はロマンチストで、女は現実的。それは真実かもしれない。
前 | 2005年 12月 |
次 | ||||
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
エイザ君の夢というと機械の体をタダでくれる星へ行くとか早く人間になりたいとか黒十字軍の幹部になるとか薔薇に囲まれて世界を革命するとか…