《書評》★★★★☆
社会企業家、ソーシャルイノベーションに関連のある人たちが寄稿して1冊の本にしたもの。社会企業家とは、社会を良くする、人を良くする革新をあまねく広める、くらいの意味かなと思いました。いくら慈善事業をしても「施し」では人は救えない、じゃあ「自分」はどうするか?というのが、ここに載ってる類まれなる才能と努力に恵まれた人たちの記録。
でも、そんな人たちでもいくつもの挫折、モノにならない不安、認められない苛立ちを乗り越えてきているのがわかる。たとえば、がん患者さん〜抗がん剤治療と脱毛が避けられない人たち〜を見て、なんとかしたいと思った三田果菜氏はがん患者向けの美容ケアを専門とする美容室とプログラムを立ち上げる。発端は本当に子どものころ感じた、共感力ともいうべき、人を思いやる気持ちからきているのね。
でも最初説明しても誰も理解してくれない・・・そんなことをあなたがしてどうするの?みたいなことを平気で言ってしまう周囲。でも、仕方がない。人が人であるための力をたいていの人は捨てて大人になる。「そいつの自業自得だ」「自分とは関係ない」「俺も大変だし忙しいんだ」「チョンは全員死ね」みたいな。そうして想像力なく不感になることでしか自分を保てないのが下賤な大人というものであるのだから。
特にU20の若い人には必読の書であると思うし、あなたが人の親であるなら即アマゾンで買って子供にぶつけるが良いよ。本書でたびたび触れられている社会企業家の父ビル・ドレイトン氏は、人の痛みを感じることが大事で、そうした感性を育てるには大学生では遅すぎるそうだから。俺らは手遅れだなw