私の相方、シラガさんはほとんどヲタ属性のない人である。
マンガは読まない。アニメも見ない。TVゲームもしない。
流行りのファンタジーにも疎そうだ。ハリポタを見ているうちに寝てしまったことがあるそうだ。
ちなみにアクション映画は苦手。サスペンスは嫌い。ホラーは大嫌いだそうだ。
しかし、そんなシラガさんにもちょっとファンタジー入っているところがある。ぬいぐるみとお話ができるのである。
シラガさんのお気に入りはクマのぬいぐるみ。家には私の知っている範囲内で5匹のクマがいる。
居間のイスに座っている3才児ほどあるクマ。
首に赤いバンダナを巻いたクマ。
サングラスをかけたちょっとスカしたクマ。
何かの限定品らしく、ケースのまま飾られた白いクマ。
中でも一番のお気に入りがはところどころ繕ったあとのある、かなり年期が入った小さなクマ。
「ねぇねぇ、クマたん。ちゃんと留守番してくれた?」
「クマたん、遊んでいるなら洗濯物たたんでおいてよ〜」
「クマたん、ちょっとそこどいて。ご飯にするから」
シラガさんはクマ好きなので、よく話しかけている。
しかし、どうも腑に落ちない点もある。シラガさんはどのクマに話しかけるときも呼びかけが同じなのだ。どのクマも『クマたん』であり、他に名前を付けている様子がない。普通は自分のお気に入りにはそれぞれの「名前」をつけるものではないだろうか。少なくとも私はそうだ。私は小学生の頃、ブロックで作ったロボットのにも、自転車にも、果ては電気スタンドにも名前を付けていたのに。
そこで、気になったので、聞いてみた。
まず、大クマを指さしてたずねる。
「この子の名前はなんていうの?」
間髪入れずシラガさんが答える。
「クマたん♪」
つぎにサングラスのクマを指さしてみる。答えは同じ「クマたん」。
続けてバンダナ巻いたクマを指さしてみる。またもや答えは同じ「クマたん?」。
最後にシラガさんが抱いた小クマを指さしてみる。やはり、名前は「クマたん!」だそうだ。
・・・法則がわからない。わからないので続けて聞いてみる。
「それぞれを区別する名前はないの?」
「ないよ」
・・・ますますわからない。わからないので再度聞いてみる。
「それで、困らないの?」
「困るの?」
不思議そうな表情でこちらを見返すシラガさん。
・・・ほんとうにわからない。わからないのでSF的解釈をしてみたりする。
「ひょっとして『クマたん』は『ゲシュタルト』なのか?」
「なに、それ?」
「いや、だから複数の『クマたん』でひとつの意識を共有していて、5匹の『クマたん』は実は同一人物で・・・」
・・・まったくわからない。私は何故こんなわけわかめなことをくちばしっているのだろうか?自分でもわからないのだからシラガさんはもっとわからなかったであろう。返ってきたのは「冷たい沈黙」だけだったが・・・。
「よぉ、エイザァ!」
そんなこんなで途方に暮れていると、シラガさんの腕の中のクマたんが手を降る。
「難しいこと、考え過ぎなんだよぉ。」
不敵に笑いながらクマたんは続けた。
「誰になんと呼ばれようと、オレっちはオレっちさ!」
どうやら本人は気にしてないようなので、私も悩むのをやめた。世の中には解けない謎があってもいい。
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おー、復活おめでとう。<br>新兵器とはシラガさんのことなのかはたまたクマたんのことだったのか。<br>まあクマたんの名前がクマ太郎、クマ次郎、クマさb……ではなかっただけよかったではないですかw
よぉ、兄弟!
コメント、おおきに。<br>おまろん様:確かにシラガさんが事ある毎に「クマ三郎♪」とか言ってたら・・・。<br>クマ三郎様:シラガさん曰く「あんまりクマっぽくなくて、残念」だそうです。