…果たして人類はそこまで本当に辿り着けるのか、辿り着く必要があるのだろうか?
日本人の野口さんのスペースシャトルでの活躍が連日ニュースを賑わしています。
一方で耐熱タイル損傷の影響も報じられています。これにより、今回の最も重要なミッションは「地球へ無事帰還すること」になったと言ってもいいでしょう。
…ただ還る為だけに宇宙へ行ったのか?
私、実は有人による宇宙開発に疑念を抱いております。そのきっかけは、4年前に発売された「わたしたちはなぜ科学にだまされるのか」という本。作者はロバート・L・バーク、アメリカ物理学会の重鎮です。彼はこの本の中でフリーエネルギーや常温核融合などにメスを入れ、またアメリカにおける学会や議会でもこれらブードゥーサイエンスに対しての(当然ながら批判する)意見を述べています。
この本の中の第4章が「宇宙開発の実態」、科学よりむしろ政治的な理由が優先するアメリカの宇宙開発の実情が述べられています。同時に、氏は科学的成果の面から有人宇宙飛行に対し否定的立場を取っています。
例えば、火星への有人飛行については、飛行中は磁気嵐や高エネルギー粒子放射線の脅威にさらされ、火星に着けば「火星には磁場がなく、荷電粒子放射線の盾となるガス体がほとんどない。火星に到着した宇宙飛行士たちはシェルターから外に出る危険を犯すことはできないだろう」と述べています。
一方で火星には既に無人探査機ローバーが到着し、予定期間を過ぎた今日までなお火星から数多くの貴重なデータを送信して来ています。
果たして、無人探査の数十倍の予算と、人命を危険にさらすリスクを犯して火星に到達したとして、「人類が始めて地球以外の惑星に立った」以外に、ローバー以上の科学的成果を収めることが出来るのだろうか?
今回のシャトルのミッションの相手のひとつである宇宙ステーションについてもこう述べられています。
「だが1980年代になると(ステーションが果たすと期待された)役割はすべて無人の人工衛星が果たしていた。おまけにロボットの方が人よりずっと機能的に仕事をこなせるしはるかに安上がりだった。また、地球や天文の高解像度画像を得る上で、有人宇宙ステーションは安定性に欠ける。乗務員のわずかな動きで宇宙ステーションの銃身の位置が変わる上、人の生命維持に必要な機器が引き起こす振動で、高倍率の画像がぼやけてしまう」
よくある無重力空間での新薬や新物質の開発についても、「重力は、原子を束ねている電磁気力に比べると微弱で、製造加工業の工程に意義のある影響を与えないのである。だいたい、巨額の輸送コストをかけても採算が取れる製造業があるだろうか?」
宇宙開発や研究に無尽蔵に資金をつぎ込むことがかなわない今、我々は宇宙開発予算をどこに振り向けるべきか、考える時期が来ているのかもしれません。
…あまり夢のない話になってしまったなぁ。結局人が宇宙へ行かなくても機械で事足りてしまうって話だし、コロンブスが「新航路開拓!」という明確な目標を持って西へ向かったのと同じように、機械ではなく人がそこへ行くべき必須の理由があればいいんですけどね。
…と、いいつつ、行きの電車の中で「プラネテス」のOPを聞いていたりする…。