昼食時、ジャンバラヤを食べているとトレイにサンマーメンを載せたO女史がやってきて隣に座る。
「・・・今日は、サンマーメンさんま抜きですから」
違う、違うよ!O女史。サンマーメンにはさんま入ってないから!
それはともかく、今日のO女史は元気がない。キレが悪い。なにかあったのだろうか。
「ただの、カゼ。今日はサムいです」
・・・まぁ、お大事に。お願いだから私にだけは感染さないで下さい。
すこし赤い顔、鼻声。それでもどこか機嫌よさそうにO女史は続けた。
「でも、わたしはカゼをひいたので、『バカ』ではないことが証明されたのだな、これが」
何故、横目で私を見ますか?私だってカゼくらいひく。それにカゼをひくのは健康管理がなってないからで(以下略)。
「それはよかったね。証明されたんだ。めでたいね」
大きく頷きながら姐さんが合いの手を入れる。
そして続ける。
「それで、ホルスタイン柄のラグをかぶっているんだ。」
そう、O女史が防寒用にゲー○ウェイの景品のウシ柄模様のラグをかぶっていることは以前も書いた。今日はいつもよりきつく体に巻きつけている。とはいえ、食堂にまでその格好でくるな!
「うん。だって寒気しますから!残念!!」
それを聞いていつものように唐辛子で真っ赤なカレーを頬張っていたリーゼント系ダンディ、ナベさんがいう。
「それでか。もう、席にウシがいるかと思ったぜ。」
お茶を一口、そのまま続ける。
「ずいぶん、ヤセたウシだよな。搾っても牛乳が出なさそうだ。」
・・・そりゃ、そうだ。O女史は毎日鍛えている。体脂肪率は20%前後。本人曰く「ナイズバデー」なのである。
しかし、どうやらO女史には気に入らなかったらしい。
「なぁんてこと、言うんですか!」
サンマーメンをすするのをやめ、胸を傲然とそらして猛抗議を始める。
「わたし、『巨乳』ですから!『巨乳』!」
いきなり、お昼の社員食堂でそんなこと、言うなぁ!
カレーを口に運んでいたチョー女史が凍りつく。
となりでラーメンをすすっていたワタさんが咳き込む。
かくいう私も口のジャンバラヤを吹き出さないよう、口を押さえる。
「わたしを『ぺったん(前事業所長秘書のこと)』と一緒にしないで!」
・・・Oさん、もう少し声を抑えて・・・。それに、ぺったんさんとは50歩100歩では?(Byロック氏)。
しかし、私のそんな心の声が届くはずもなく、O女史は大声で主張し続ける。なにかトラウマを刺激したのだろうか?
「わたし、ないチチじゃな〜い。巨乳ですから!おっぱいも出がよかったんですから!」
そして最後につぶやく。
「・・・なにが悲しくて、『ぺったん』みたいな、ないチチ娘と一緒にされなきゃいけないんだろう?」
・・・なにが悲しくて美女が「巨乳」だの「ないチチ」だの「おっぱい」だののたまうのを聞かなきゃならんのだ?
だが、わたしには周囲の冷たい視線を感じながら、ジャンバラヤを無言で頬張ることしかできなかったのである。
今日は工場の「方針説明会」。要するにエライ人が今期のテーマだの目標だのを工場メンバーの前で説明をする会である。そろそろ集合時間だ、と席から立ちあがろうとするといきなり電話が鳴る。
電話を済ませ、急いでいかなきゃ、と立ちあがろうとするとまたもや電話。見回すと誰もいない。みんな会場である体育館に行ってしまったようだ。
・・・ひょっとして私まで体育館に行ってしまうと事務所がカラになってしまうのでは・・・。どうしてうちのエライ人はこんな簡単なことに気が付かないのであろうか。しかたがないので自主的に留守番することにする。後で怒られたらそのときだ、・・・ってこういうことで怒られる覚悟をしなけりゃいけないのもウツである。
こういうときに限って電話が鳴りまくり、応対に追われたりする。約2時間後に総務メンバーが戻ってきたときには電話メモだらけ。しかも自分の仕事は全然、進まない。気分的に疲れた2時間であった。
そして昼休み。お昼のビビンバ丼の半熟卵を崩しながら、ナベさんに尋ねてみる。
「ナベさん、今日の方針説明会、どうでした?」
50過ぎのリーゼントダンディ、ナベさんは辣油で真っ赤に染まったちゃんぽんから顔をあげて答えた。
「あ〜そうだなぁ、ヒヤヒヤしたよ。」
「へ?」
なんだ、そりゃ?私はどんなことを言われたのか、聞きたいんですが。
しかし、ナベさんはそのまま続ける。
「ホラ、体育館、雨漏りしてるからさ。エライ人の頭に雨漏りしないか、ヒヤヒヤしてたよ」
・・・なんだそりゃ。まぁ、設備担当としては気になるのはわかります。しかし私が聞いているのはそうじゃなくて・・・。
「いっそのこと、エライ人がずぶ濡れになればよかったんだよ」
ちゃんぽん――ただし辣油なしなのでスープが白い――をすすっていたワタさんが口を挟む。
同じく50過ぎ、ヒゲのない波平さんといった風貌のワタさん。穏便な口調でさらりとムチャクチャいう。
「いや、そりゃそうだな。エライ人がずぶ濡れになったら補修費予算もおりるだろうし」
「エライ人も、工場長じゃなくて、専務とか常務じゃないと」
「いっそのこと、次回は来賓席の上あたりに穴でも、開けとくか」
「で、前の夜からバケツかなんか仕掛けておくとか」
いきなり悪巧みを始める総務ベテランコンビ。いや、私の聞きたいのはそんなことじゃなくて・・・
「いや、話の内容はどうだったかなぁ〜って、聞いたつもりなんスけど・・・」
それまでいかにして体育館の雨漏りで来賓席を水浸しにするか、方法を検討していた2人がこちらを振り向く。
「スピーカーの声がワレてて、よく聞こえなかった」
「いやー、キレイごとだね。それしかおぼえてない」
この工場大丈夫かしら、と不安になるエイザであったが、ベテランコンビによる検討は次の段階に移っていく。
「じゃあ、スピーカーも直したいよな」
「それも2ヶ所じゃなくて6ヶ所ぐらいに分散させないと、よく聞こえないよ」
まぁ、プロ意識・改善意識は充分のようではあるが。
私はPCについては「シロウト」である。自分でPCを自作したこともないし、プログラム言語も使えない。フローチャートも描けなければ、HTMLも書けない。ただの「ユーザー」さんである。
しかし、なぜか総務のOA担当なんぞを押し付けられている。そして事務所内の人々から、ExcelだのWordだの、Powerpointだの操作法がわからない〜と、たびたび呼びつけられるのである。
「おい、エイザ!」
ムジナ部長が突然私を呼ぶ。いつも苦虫を噛み潰したような表情のムジナ部長だが、妙に優しげな、苦笑いの顔。こういうときはOA操作がわからなくて、途方にくれているときである。
「すまんが、教えてくれ。このパワーポイントに写真を貼り付けたいんだが・・・」
「はぁ、元データはどこですか?」
「共有ドライブの○○だ」
「えーとですね、それなら、ここをこうやってこうして、こうすれば・・・」
「ついでだ。これもやってくれ」
はっきり言ってほとんど「作業代行」または「下請け」である。
そんな風に振り回された夕方。疲れきった状態でデータの整理をしていると、遠くで誰かが呼んでいる。
「おい、エイザ!エイザ!・・・エイザさん!エイザさん!?」
のろくさを首を90度左に回すと、妙に優しげな表情をしたムジナ部長が席で手招きしている。・・・気がつかなかった。慌てて立ち上がり、ムジナ部長の席に行く。
「スイマセン。なにか?」
「教えて欲しいんだが。インターネットを開くときには『ツール』から開くんだっけか?」
は?Webにつなぐのに『ツール』?何のことだ?訳わかめ状態の私に対して部長が追い討ちをかけて来る。
「それとも『アクション』だっけか、『表示』だっけか?」
ますます訳わかめ。「アクション」といえば「Big−O」。いや「アクション仮面」とか。
頭の中で始まった巨大ロボットVS仮面のヒーローの異種格闘技戦を振り払い、できるだけ平静な、穏やかな、丁寧な口調で聞いてみる。
「あの、インターネットってインターネットですよね」
我ながらバカな質問である。しかし部長はまったく動じずに深くうなずく。
「えーと、IE、開いてます?」
部長は眉間にタテジワを刻み、こちらをにらむように答える。
「『アイ・イー』ってなんだ?」
心の中にものすごい不安とドス黒い何かが湧き上がってくるのをムリヤリ押さえつけ、できるだけ平静な、穏やかな、丁寧な口調で訊いてみる。
「あの、画面見せていただいてもよろしいですか?」
「ああ」
失礼させていただいて部長の席の後ろに回りこみ、PCの画面を覗き込む。やはり、やはり、やはり。
画面に開いているのはOutlookのみ。ポインタがメニューのツールに合わせられておりメニューが開いている。
「・・・インターネットを見るときはですねぇ。まず一番下のスタートボタンを押して、『インターネット』って書いてあるアイコンを選んでください。次に上のメニューから『お気に入り』を押してですね・・・」
全身を駆け巡る脱力感に耐えながら、操作法を説明する。それがひとまず終わった後、部長はこう、のたもうた。
「メールからインターネットは見られんのか?はじめて知った・・・」
要するに今まではメールについてきた「リンク」しか使ったことがない、という訳なのだろう。
そして私程度がOA担当が勤まる理由を痛いほど理解したのであった。
とはいえ、デジタルディバイド、ひどすぎません?
_ 通りすがりのあいあん [どこの職場も同じですな。ウチも「作業代行」してるしね。 「パスワード」と「メールアドレス」の区別がついてないおぢさま..]
_ ぱ [自称専門家から言わせてもらうと言葉の問題じゃないね。鉛筆をどう使うか、未開の原人に渡したら想像もつかないだろう。筆記..]
_ ぱ [要はアプリケーションの使い方なんて瑣末な問題なんだよ。鉛筆がクレヨンでもシャーペンでもいいように、アイコンやマウスの..]
_ 通りすがりのあいあん [専門家の方々には大変失礼な物言いでした。すみません。 メーカーのカタログにしてもTVCMにしてもPC用語をステータス..]
_ ぷろふぇっさーK [PCの外周りの素材のことなら詳しいのかもしれん<元化学科(材料化学専攻)]
_ エイザ [コメント、恐悦至極(本当にネタ切れ)。 あいあん様、ぱ様>興味深い御意見ありがとうございます。 エイザ的には「もう..]
_ エイザ [ぷろふぇっさーK様>化学というと、「素材」より「爆発!」とか「溶解!」とか「凍結!」とかそんな物騒な言葉が先にうかん..]
_ ぱ [ま。あいあんさんの言うことは良くわかるんだけどね....ただむしろ現実は逆かなと。 つまり専門用語で煙に巻くよりPC..]
朝、Excelと格闘中、電話が鳴る。いつものように「音速の左手」で受話器をつかみ上げ、声を「よそ行きモードに切り換える。
「はい。A社W工場、総務部エイザでございます。」
先方は中年男性の声。
「そちらのテナントで、○○社っているでしょ」
挨拶なし、名乗りもなし。こういう電話は要注意である。売り込みならまだしも悪質な「クレーマー」の可能性もある。警戒モードを一段階引き上げることにする。
「はい、○○社ですね。確かに当社のテナントにおりますが・・・」
「さっきから何度もかけてるんだけど、通じないんだ。」
そんなこと、こちらに言われても困る。それは○○社の問題。ウチには関係ない。しかしそう口に出すわけにも行かない。
しかたがないので、「はい」とか「はぁ」とか適当にあいづちを打っていると、先方が突然、ブチ切れモードでとんでもないことを言い出す。
「電話に出ないんなら、電話なんて置くな!って言ってやれ!」
しかも命令形である。非常にやりにくい、ヘンな人なのは間違いない。やれやれ。
「はぁ、少々お待ちいただけますか」
面倒くさくなってきたので、電話を転送モードに切り換え、内線電話で○○社を呼び出してみる。コール1回、2回、3回・・・。確かにコール10回でも出ない。留守なのか?それとも夜逃げ済み?
そんなこんなでイヤになってはいたが、再度電話機を操作し、モードを切り替える。「よそ行きモード」の声のまま、先方に説明する。
「申し訳ございません。内線での転送を試みましたが、どうも不在のようでして・・・。よろしければ折り返し電話するように申し伝えますが・・・」
「じゃあ、お前事務所見て来いよ!ひとっ走り見て来いよ!」
一瞬、思考停止。そこまで言うか、このオヤジは・・・。だが、電話はまだつながっている。対応を考えねばならない。おそらく相手はカタギじゃない。一般的な社会教育を受けていないか、無視しているかどちらかだ。丁寧に対応しなければならないが、「マトモ」に相手する必要はない。
「それでしたらお電話一度置かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「はぁ?なんでだよ!」
間髪いれずに切り返す。丁寧に、ゆっくりと。避けよう逃げようとするな。しかし額面道理に受け取る必要はない。落ち着いて、落ち着いて。
「はい。○○社の事務所は、別の建物にありまして、現地まで時間がかかります。よろしければお名前と御連絡先をいただけますか。当方より御連絡いたしますが・・・」
「・・・わかった。名前は『×田』。後で電話する。」
そしてガチャ切り。まぁいいさ。想定の範囲内ですから。残念!
こっちも電話をおいて、考える。まず○○社へ連絡。対応方法の相談。上司への連絡。チーム内情報共有。売り込みならもうかかってこないだろうが、クレームならまた来る可能性が高い。5分で対応準備をしなければ・・・。
しばらくして電話が鳴る。受話器をとったO女史が私を呼ぶ。×田氏の電話を取ってしまったらしい。すぐ、電話を転送してもらう。
「はい、エイザと申します。○○社の者と連絡取りましたところ外出中とのことです。10時半には戻るそうですので、御手数ですがそれ以降にお電話いただきたいとのことです。」
可能な限り丁寧に説明すると、×田氏が答える。口調がすっかりヤクザ調。妙に偉そうな調子だ。
「おい、じゃハリガミしとけや」
思いっきり命令口調。オレに命令するな!オレに命令できるのはオレだけだ!上司のムジナ部長やタヌキ課長の命令だって聞かないのに何故、見も知らぬ貴様如きに命令されねばならんのだ!なんて言葉は飲み込んでおく。
「ハリガミ・・・ですか?」
口にだしてみると頭の中でイメージが浮かぶ。ボロアパートのドアに「金返せ!」とかいっぱいに貼ってあるイメージ。やっぱり、アレかな?
「『△△△(名前)、金返せ』って書いて貼っとけや!」
やっぱりそうだったーッ!これはかなり性質が悪そうだ。
「いいか、すぐハリガミしとけ!」
すっかりもうヤクザ語ネイティブ口調で偉そうに命令してくる×田氏。いったい何様のつもりなのだろうか。
「えー、申し訳ございません。ハリガミについてはお受けできません。御伝言ということで○○社にお伝えいたしますので・・・」
丁寧にお断りする。心の中では「だが、断る!」とかタンカきってやりたいのではあるが、ここはガマンである。
しかし×田氏はガマンなどしなかった。
「なに言ってヤガル!こっちはハリガミしろって言ってんだよ!金借りて返さないわ、連絡はつかないわで困ってんだよ!もし、いいかげんなことするようなら、お前の会社の別のところに電話するぞ。それでもいいのか、わかってんのか!」
この後もなにか一方的にに怒鳴っていたが、もうなにを言っているのか、わからない。というより理解する気もない。ほとんどグロンギ語を聞いているような気分である。
数分、ハイハイ言って聞いていたが、×田氏の言葉が尽きてきたようなので、なるべく丁寧にいう。
「はい、それでは伝言は○○社にお伝えいたします。よろしいですか」
次の瞬間、電話はガチャ切りされた。フン、想定の範囲内さ。
しかし、意外に心理的ダメージは大きかったようだ。私は大きくため息をついて、床にしゃがみこむことしかできなかった。いや、ホント。マジで。
数時間後。○○社の総務のおばさんが菓子折りもってお詫びにやってきた。つき返しつつ、話を聞いてみる。
おばさん曰く、△△さんは昔サラ金から借金したことがあったが、きちんと完済したそうだ。しかし、そのデータが流れてしまったのか、こういう電話が連日続いているらしい。いつ、どこから、いくら借りた金なのかも言わずただ金返せ、と繰り返す。要するに「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」の凶悪バージョン。警察に相談もしたが、まだ事件性が低いのでどうにもならない、とのこと。たいへん困っているそうだ。
「こういうことがあるのは知っていましたが、いざ自分達に降りかかってくると・・・。別の世界の話だと思っていました・・・。本当に申し訳ありません」
「いえいえ、お互い、落ち度があるわけじゃないですし。本当に気にしないで下さい」
「本当に申し訳ありません。これ(菓子折り)受け取っていただけませんか?」
「いや、受け取れません。そちらの皆さんで「厄落とし」代わりで召し上がってください」
心惹かれるものがあったが、がんばってつき返す。おばさんは菓子折り片手に、頭を下げ下げ帰っていったのであった。
というわけで、今日の教訓。お金に困ったときでもサラ金に手を出すのはやめましょう。後が怖いよ。総務部門も迷惑するし(ここが本音)。
午前4時頃、猛烈な寒さを感じて目を覚ます。どうやら寝ている間に毛布を蹴り出してしまったようだ。あらためて毛布をキッチリかぶり、その上から掛布団を引き上げて寝直す。
午前5時頃、猛烈な喉の渇きを感じて目を覚ます。どうやら口を空けたまま寝ていたようだ。ベッド脇のテーブルから湯飲みをとり、冷めきったお茶を飲み干して寝直す。
午前6時。猛烈な頭痛のため、起きられず。体温を計ると38℃オーバー。会社に行くのをあきらめて寝直す。
午前7時。猛烈なだるさのなか、病院に行くため起き出す。2日酔い以外で食欲がないのは何年ぶりだろうか。ちょっと不安になる。
午前11時。病院から帰宅。もうダルくてツラいので、薬飲んでフトンかぶって寝ます。おやすみなさ〜い。というかオレの眠りを妨げるものに呪いあれ。
最近、O女史は元気がない。元気がないのでツッコミがない。すると平和な日々が続くことになるが、当然『ネタ』がなくな離、本ブログ「エイザの奇妙な冒険」の更新が滞る。困ったものだ。
今日もお昼休みのチャイムが鳴り、総務のメンバーもぞろぞろ歩いて食堂に向かう。その途中で、急に姐さんが話しかけてくる。
「エイザちゃん、今日はあぶないよ」
「・・・何の話ですか?」
首をひねって姐さんに聞き返す。姐さんはなぜか楽しそうに続ける。
「今日、Oさん『ご機嫌斜め』だから、そっちに攻撃、行くかも」
・・・攻撃が私のところに来るかもしれないのに、何故この人はこんなに楽しそうなのだろうか?
「怒ってるんですか?」
「うん、怒ってるの。」
そうか、O女史は怒っているのか。機嫌が悪いのか。
「なら、攻撃されても大丈夫ですよ」
静かに姐さんに告げる。正直『ご機嫌斜めな』O女史は怖くない。本当に怖いのは・・・。
「怖いのは、『ゴキゲンな』Oさんです。怒っているO女史のツッコミは怖くありませんよ」
「え?そういうものなの?」
怪訝そうな姐さんに説明を続ける。
「Oさんのツッコミは『ゴキゲンな』ときの方がスルドイので。機嫌が悪いときは切れ味がニブイんです。」
不思議そうな顔の姐さん。まだ納得していないようだ。そのまま説明を続ける。
「機嫌の悪いときのツッコミはポイントがズレているんで、あまり痛くないんです。でも、『ゴキゲンな』Oさんは、弱点をピンポイントかつナチュラルに突いてきますから、思わず『ぐはぁ(吐血)』って感じになるんです。」
「・・・そういうものなんだ・・・」
「そういうものなんです。」
断言する。伊達に何度も何度も何度も、O女史にツッコミ喰らっていないのである。・・・ちょっと悲しい気もするが。
そんなこんなでみんなでお昼ご飯。いつものようにバカ話をしていると、なぜか「寝ぼけたとき」とか「夢」の話になる。
「エイザはどうなの?」
チョー女史がこちらに水を向ける。口に入っていた鶏肉のグリルをみそ汁で飲み下し、答える。
「2週間ぶりくらいで、夢を見ました。」
これは本当である。夢見が悪くて目が覚めたのだ。
「どんな夢、見たの?」
O女史が目を爛々と輝かせてこちらを見る。なにかツッコミどころを探している目である。
「はぁ、熱いてんぷら鍋をひっくり返して、腰から下にてんぷら油をもろに浴びて・・・」
全員が黙り込む。頭の中で光景を再現しているのであろうか。ナベさんは心底いやそうに顔をしかめている。
「なんつー夢を見るんだ、この人は・・・」「熱そう・・・、夢でよかったね」「夢判断どうするのか、悩むわね」
それぞれの論評が終わったところで続ける。
「で、火傷して、風呂場のシャワーで冷やしているうちに、目が覚めました。」
言いながら考える。この話のツッコミどころはどこだ?NGワードはなんだ?
結論はすぐに出る。『睡眠中』、『夢』、『水』、『冷たい』・・・そこから導き出される答えはひとつ。
ところがO女史がツッコミをいれてこない。お茶の入った湯飲みを持ったまま、顔をしかめている。てんぷら油を引っかぶった自分を想像しているのであろうか。
・・・なにか物足りない・・・。しょうがない。自分で言ってしまおう。
「あ、あらかじめ言っておきますが、『お・ね・しょ』はしてませんよ」
「・・・・ああ〜っ」
O女史の顔に理解の色が走る。すぐにものすごく悔しそうな表情になって続ける。
「あ〜、その手があったか!『夢』で『水』と来たら『おねしょ』だぁ!」
本当に悔しそうなので、こちらもそれ相応の対応をすることにする。くちびるを歪め、皮肉な笑みを浮かべて続ける。
「フッ、あまりにもニブイんで、セルフツッコミさせていただきましたよ」
わざとらしく鼻で嗤ってみせると、O女史は悔しそうな笑顔で答える。
「く〜や〜し〜い〜!頭の中、怒ってるのでいっぱいだから、気がつかなかった〜」
「いや、メモリの足りないパソコンじゃないんだから」
「うわーん、くやしいなぁ」
ちょっとかわいそうになったので、口調を変えて労わってみる。
「早めに『再起動』かけた方がいいのでは?フリーズしちゃいますよ」
「そうだよねぇ、そうしたいんだよ〜、でもタヌキがねぇ〜(涙)」
あのイナズマみたいなO女史のツッコミが・・・こんなになっちまって・・・(涙)。※「明日のジョー」風に読むこと
そんなこんなで、O女史は元気がないのである。とっても心配である。
O女史には早く元気になって欲しいのである。が、元気になるということは、毒を塗ったアサシンの短剣のようなツッコミにさらされるということで・・・。「二律背反」な、しかし「どうでもいい」悩みに引き裂かれているエイザであった。
今日は野毛にて開催中の「第30回野毛大道芸」を見に行った。
飛び交う松明、宙を舞うナイフ。
踊る帽子とシガーボックス。
時々、チェンソーやらピングー(のぬいぐるみ)やらブーメランやらが飛んでたりする。
…すまん。大道芸ナメてました。こんなに面白いとは思っていませんでした。
反省することしきりのエイザであった。
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_ クマ三郎 [イカン、どうしてもどこぞのナー○さんがリ○を罵倒しているシーンしか思い浮かばない。 それはそうと、そろそろサンクスコ..]
_ ぱ [こんな職場うらやましいようなうらやましくないような。]
_ エイザ [コメント、アリャートーゴジェーマス(オンドゥル語?)。 クマ三郎様>グロンギ語、その手があったか。しかしグロンギには..]