土曜日、toga氏と寄せ鍋をつついた後、ベーグル屋さんでコーヒーのみながらダベっていたのだが。 その中の世間話として 海賊版広告の話題があった。 toga氏はコンテンツ畑の中の人。これが順調に立ち上がれば、自社コンテンツのYoutube提供も考えているということ。 日本の業界でも相当保守的な会社でこんな話が出るということは、いよいよ本格的に立ち上がりそうな予感。
画像認識自体はとても古い技術。工場ではプリント基板の位置合わせや監視カメラの動体検出などで 80年代に大きく進展した。しかしその後コンテンツに適用〜電子透かしや違法アップロードの検出、 といった用途に適用しようとした時点で思考停止に陥ったように思う。
俺の研究室では電子透かしを長くやっていた。映像も楽曲もやっていて、楽曲の著作権保護技術ではちょっと 有名だったりしたのだが、全て「保護しないと大変だよね」という原則論で話が進んでいたように思う。
被害額〈膨大な運営コスト という議論なしに....。当人達は一生懸命やっているんだけど、 その努力はなーんにも新しい市場を生み出さないわけだ。大変だ!→対策する→効果がない→よりコストをかける、という 言わば 「陰のサイクル」 。だいたい、電子透かしで配信元が特定できたとしても、その後は より安価な手段で大量に複製されてしまうのだから、全く意味がない。
2008年現在でも、中国で本家DVDの発売前にDVDやVCDが出てしまうこと自体が主要な被害なわけで、 電子透かしより、プレス工場やポストプロダクジョンのスタッフ管理を徹底したほうがコスト対効果が高いのは明らかである。
Googleは、検索エンジン広告同様、既存技術の使いどころがうまいな。 画像認識がネット上で初めて 「活きるサイクル」に組み込まれた という意義はとても大きい気がする。 ビジネスモデルという単語でくくると「はげしくうさんくさい」けどね。
あと。例えばコンテンツAとコンテンツBを組み合わせたMADビデオが大人気になったとして、 コンテンツA企業が自社コンテンツの権利をYoutubeにライセンスし、コンテンツB企業が拒んでいたとすると、 海賊版フィルタから検出された広告料配分は、全てコンテンツA企業になるそうだ(笑)。 この仕組だと「(どうせ黙っててもうpされちゃうんだし)自分でYoutubeにうpしたほうがよくね?」と頭の固い企業の考え方を 軟らかく変えさせる、という意義もあるでしょう。誠に良く考えられていると思います。
久々に技術者として光明が見えた気がするから...かな。
正直に白状すると、俺はここ数年ずっとTVの開発をやってて、B-CASやEPGの権利関係でイライラしてる人間の一人だったわけよね。 「なんでこんなことをやらなきゃならないんだ」「この部品とテスト工数がなければ安く作れるのに」 「絶対使いにくいよなこんなの」と(全員とは言わないけど)大半の開発者は考えて、それでも仕方なく開発していると 思うにょ。欝だ死のうって奴ね。
そのくせ、掲示板や消費者団体は(あまつさえ総務省さえ)「メーカが勝手に決めた」とかほざきやがるわけですよ。 メーカーじゃないメーカーじゃにゃい。技術提案したのは確かにメーカだけど、それは んHKとかNテレ から 強大な圧力がかかってたからに決まってんだろ!と。言ったら最後干されるから言わないだけです。って書いてるが。
技術者としては、既存のビジネスモデルに囚われず、いい方に変えるような、活のサイクルを提案していきたいと思う次第です。
昔、会社の先輩が「マイナスをゼロにする努力は続かないよ。少なくとも、他人を動かすのはもっと大変」と語ったことがあります。海賊版問題に限らず、環境問題対応や消費者問題対応なんかもその傾向があり、どうやって「ゼロをプラスにする=‘活きるサイクル’」に変えていくのか、知恵の使いどころなのでしょう。
すまん、言葉が足りてなかったようだ。A社がMAD映像に対して権利を主張して、B社がしなかった場合、広告料配分はA社のみに行く仕組みなんだ。A社がOkでB社がNGの場合は多分映像自体が流せないと思うよ。